- 20年以内に気温上昇1.5度、パリ協定目標達成には排出の大幅削減必要
- 最近10年間は過去12万5000年間で最も気温が高かった-IPCC
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC) は最新の報告書で、温室効果ガスの排出抑制に向け思い切った行動を取らなければ、今後20年以内に産業革命以降の気温上昇がセ氏1.5度に達するだろうと警告した。気候変動の影響が世界各地で明白になる中で、パリ協定で掲げた気温上昇の目標達成が厳しいことを報告書は示した。
今回の報告書は初めて、気温上昇は完全に人間の活動に原因があると断定。温室効果ガスの排出が止まらない限り、気温上昇の傾向も終わることはないだろうと予測した。
IPCCは「人間の活動による影響が大気や海洋、陸地を温暖化させたのは疑いの余地がない」と言明。「数十年以内に」大幅な排出削減が実施されない限り、重要な節目である気温2度の上昇は「21世紀中に超える」だろうと論じた。
9日発表された報告書は、200人以上の科学者が関与して膨大な研究結果をまとめ上げ、195カ国の代表が承認した。IPCCがこうした報告書を発表するのは1990年以降6回目で、前回は8年余り前だった。第26回国連気候変動枠組み条約締結国会議(COP26) 開催を11月に控え、他のいかなる予測や記録よりも報告書は強力かつ世界的なコンセンサスを打ち出している。
地球の過去12万5000年間で、最近の10年間は恐らく最も気温が高かったとも報告書は指摘。過去200万年間で大気中の二酸化炭素濃度を最高に押し上げた要因には、化石燃料の燃焼と森林破壊もあると説明し、メタンや亜酸化窒素の大気中濃度は少なくとも80万年間で最高の水準にあり、農業や化石燃料がこれに寄与していると続けた。
国連のグテレス事務総長は今回の報告書を「人類に対する緊急警報」だと準備書面で表現し、「石炭や化石燃料が地球を破壊する前に、これらに終わりを告げる警鐘にこの報告書がならなくてはならない」と述べた。
報告書によると、世界各地で見られている自然災害のほぼ全ては人間の活動に責任があると言える。人間の活動による効果を合計すると、世界の平均気温を19世紀後半の平均からすでに約1.1度押し上げている。一方、太陽や火山など自然要因の温暖化への寄与度は、ほぼゼロだと見積もられた。実際、人間は気温を1.5度上昇させるだけの温室効果ガスをこれまでに大気中に排出したが、化石燃料の燃焼で発生した有害な粒子状物質が冷却化効果を及ぼし、温暖化を一部打ち消しているという。
原題:Scientists Reach ‘Unequivocal’ Consensus on Human-Caused Warming(抜粋)