東京五輪が終了して現実に戻ればそこは地球環境破壊という現実だった。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC) は昨日最新の報告書を公表した。ブルームバーグによると「温室効果ガスの排出抑制に向け思い切った行動を取らなければ、今後20年以内に産業革命以降の気温上昇がセ氏1.5度に達するだろうと警告した。気候変動の影響が世界各地で明白になる中で、パリ協定で掲げた気温上昇の目標達成が厳しいことを報告書は示した」。温暖化を背景に世界各地で頻発する森林火災、海水温の上昇にともない巨大化する台風、滞留時間が長く急激に発達する低気圧、これらがすでに世界中に未曾有の被害をもたらしている。このまま何もしなければ地球上で壊滅的な環境破壊が続き、なにものにも変え難い人類の命があちこちで失われる、と警告しているわけだ。警告は今回はじめてではない。繰り返し、繰り返し唱えられている。だがコロナと同様、深刻な警告にたいする反応は鈍くなる一方だ。

ブルームバーグによると報告書は今回初めて、「気温上昇は完全に人間の活動に原因がある」と断定した。環境破壊の諸悪の根源は人間の活動にあるのだ。おそらくそれは誰もが理解していることだろう。犬や猫、熊やライオンなど動物が地球環境を破壊しているわけではない。逆に言えば、人間以外に温室効果ガスを排出する動物はいない。報告書は「太陽や火山など自然要因の温暖化への寄与度は、ほぼゼロ」と見積もっている。とすれば「人間の活動に原因がある」ことは火を見るよりも明らかだ。そのうえで報告書は、「『数十年以内に』大幅な排出削減が実施されない限り、重要な節目である気温2度の上昇は『21世紀中に超える』だろう」と強調する。いまから80年後、人類の住む地球はいたるところ灼熱の大地となる。そこに住み続けることは可能なのだろうか?想像を超えた世界が待ち構えているようだ。いずれにしても我々の子孫には劣悪な環境が待ち構えている。

人類も手をこまねいているわけではない。2050年にCo2の排出を実質ゼロにすべく国際的な協調体制を整えよとしている。EUは50年ゼロを目指し、通過点である30年にガソリン車を完全に排除する方針を決めた。米国も最近、新車の半数を30年までに電気自動車(EV)などの電動車とする目標を打ち出した。日本は30年までにCo2の排出量を13年比46%削減する方針で、これを推進するための電源構成を再生エネルー主体にする方針を国内外に表明した。だが脱炭素を目指して積極的に行動を起こそうとしているのはいまのところ先進国だけだ。新興国や最大のCo2排出国である中国は様子見の姿勢を崩していない。先進国とて脱炭素に向けた意気込みには温度差がある。急激な脱炭素化の推進は失業率の増大に直結する可能性があるからだ。先進国の内実も高い目標はかかげるものの、現実の間には大きな乖離が横たわっている。目標を掲げるだけでは脱炭素化は進まない。政治家が躊躇する“現実”をどうやってリードするか、勝負はこの一点にかかている。