【ニューデリー時事】アフガニスタンの反政府勢力タリバンが15日、首都カブールへ進軍し、ガニ大統領が国外に脱出した。タリバンとの和平交渉責任者、アブドラ前行政長官がフェイスブックで明らかにした。2001年の米英軍による攻撃を機に成立した民主政権の事実上の崩壊とみられ、アフガン情勢は重大な局面を迎えた。

【特集】アフガニスタン情勢

 タリバンは戦闘員をカブール市外で待機させた後、ガニ氏の脱出を受けて、市内への突入を指示した。タリバンが権力移譲に当たって主導権を握るのは確実で、停戦の行方も焦点となる。

 タリバンは先に、主要都市が軒並み占拠されて孤立している首都の包囲を狭め、ガニ氏に権力を移譲するよう圧力を強化。ミルザクワル内相代行は「暫定政府への権力移譲が平和裏に行われる」と表明していた。

 ロイター通信によると、ガニ氏は米国のハリルザド・アフガン和平担当特別代表と急きょ協議。モハマディ国防相代行は「ガニ氏が全権を委任した長老らが16日にカタールの首都ドーハに向かう」と説明した。権力移譲をめぐって交渉する見通しで、タリバンの広報担当者は数日中の「平和的な移譲を望む」と英BBC放送に述べた。

 カブール市内について、地元記者は電話取材に「15日になって電話が通じにくくなった。(日曜が平日のアフガンで)銀行も緊急休業した」と証言した。住民が避難するための現金も引き出せない状態という。

 タリバンの進軍に先立ち、米国防総省は、大使館員の退避支援のためカブールに軍を増派すると発表。ロイター通信によると、15日にはヘリコプターで退避が始まった。

 タリバンは14日、北部バルフ州の州都である要衝マザリシャリフを制圧。政府側は東部ジャララバードも15日に失った。政府軍の士気の低下は明らかで、連日の州都陥落により、全34州都の大半がタリバンの手に落ちた。

 マザリシャリフは、中央アジア・ウズベキスタンとの国境に近い交易の拠点で、ガニ氏が反撃の拠点とすべく11日に訪れ、政府軍を激励したばかりだった。地元州議会議員は取材に「タジク人のアタ・モハンマド・ヌール元州知事、ウズベク人のドスタム将軍ら軍閥トップを含め、街の守備部隊は国境に向かって逃げ出した」と語った。