オリンピックが終わり、お盆休みも終了したが、日本列島を横断するように覆っている低気圧は一向に去る気配がない。日本気象協会(16日午前4時発表)によると「東シナ海から九州を通り、日本の東に停滞する低気圧」は今週も居座る可能性が大。「前線の活動が活発になり、九州を中心に再び大雨になりそうです」。この低気圧に線状降水帯が発生、降りはじめからの「総雨量(本日の午前4時現在)は佐賀県嬉野市で1028ミリと、8月の平年の雨量(277.7ミリ)をはるかに超えています」とのことだ。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC) は最新の報告書で「人間の活動による影響が大気や海洋、陸地を温暖化させたのは疑いの余地がない」と断定している。人間の営みが世界中で人類に禍をもたらしている。日本列島を覆っている線状降水帯を含む低気圧が長々と停滞するのもそれが原因ということだ。

なんとかしなければ。人類は2050年にカーボンニュートラルを実現すべく動き始めた。おぼつかない足取りだが、脱炭素の必要性は徐々に認識され始めている。そんな中で14日の日経web版に「『太陽光遮り、温暖化阻止』窮余の策、気候操る危うさ」というタイトルの記事が掲載された。米ハーバード大学が中心になって進めているプロジェクトで、「高度20キロメートルの成層圏に炭酸カルシウムの粉末を気球でばらまく計画を練る。歯磨き粉の原料にもなる粉末は大気中を漂い、太陽光の一部を反射する巨大な日傘になる」という。そんなことが本当に可能なのか、記事を読みながらいくつもの疑念が頭をよぎった。太陽光を遮るのは良いとしても、必要以上に光を遮断することにならないか、炭酸カルシウムの粉末は不要になれば回収できるのか、粉末を散布するためにCo2を排出したら元も子もない、次々と疑問が湧いてきた。

似たような研究は他にもあるようだ。オーストラリアのサザンクロス大学などは塩の結晶を対流圏の雲に届ける研究を進めている。「結晶を含む雲が太陽光を反射し、日差しが弱まるという。海水温の上昇を抑え、グレートバリアリーフのサンゴ礁が白化するのを防ぐ。20年3月に基礎実験に成功した」とある。それはまるで「地球の気候さえ人の手で作りかえる技術にも手を伸ばそうとしている」(日経web版)かのようだ。実験自体は否定しないが、いずれの研究も温暖化阻止を追求したもので、目的は一面的。原子力を利用する方法は手に入れたが、放射能の制御はいまだに未完成という状況に似ている。技術の進化には良い面と悪い面がある。人類は第1次産業革命以来科学技術を進化させながら繁栄してきた。とはいえ、技術の進化は新たな負の側面を生み出す。進化と負のイタチごっこ。ふと、ここに落とし穴があるような気がした。