【ブリュッセル時事】南欧など地中海沿岸で今夏、記録的熱波が猛威を振るっている。各地で大規模な山火事が相次ぎ、農地や住宅にも延焼。深刻な被害は気候変動への危機感を一段と高めている。

 イタリア南部シチリア島では11日、48.8度を観測。世界気象機関(WMO)の正式認定待ちだが、1977年にギリシャ・アテネで記録した欧州観測史上最高の48度を上回った。また北アフリカのチュニジアの首都チュニスでは10日、49度を観測し過去最高を更新した。

 極端な高温の要因は、地中海上空に停滞した広範囲に及ぶ高気圧だ。地上の空気に「ふた」をして気温を上昇させる「ヒートドーム」と呼ばれる現象が発生。「気候変動で見込まれる典型的現象だ」(WMO)とされる。

 高温で乾燥した空気は山火事を招きやすくなる。ギリシャでは中部エビア島や西部オリンピア近郊を中心に被害が拡大し、住民ら数千人以上が避難。約2週間で東京23区の1.6倍に相当する1000平方キロメートル以上が焼失した。

 ミツォタキス首相は12日、「気候危機が到来した。大胆な解決策が求められる」と強調。気候変動対策に決意を見せた。ただ、住民らからは消火活動の初動の遅さなど政府批判も出ている。

 山火事はイタリアやトルコでも続発。アルジェリアでは住民や兵士ら70人超が死亡した。

 国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が9日に公表した報告書は、1900年までと比べてこうした極端な高温の頻度は既に4.8倍に高まったと分析。平均気温が2度上昇すれば、頻度が13.9倍になると見込んだ。

 今夏は他の世界各地でも記録的熱波や集中豪雨が相次ぐ。10月末から英国で開かれる国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)でも異常気象をめぐって議論が交わされそうだ。