23日付で報道された記事が少し気になっていた。YAHOOニュースに転載された共同通信の記事を例にとれば、「厚生労働省と東京都は23日、改正感染症法に基づき都内の全ての医療機関に対し、新型コロナウイルス患者向けの病床確保と最大限の患者受け入れを要請した。2月の同法成立後、国としての要請は初めて。感染急拡大による病床逼迫を受けた措置」というもの。デルタ変異株が猛威をふるっている中で、医療現場は日に日に逼迫の度を強めている。大中小を問わず病院や開業医、診療所は総力をあげて医療現場の逼迫解消に努めていると思っていた。だが、この記事には厚労省と都が「病床確保と最大限の患者受け入れを要請した」とある。何をいまさら、率直な感想だ。そんなことを思いながら文藝春秋(9月号)の記事を読んだ。

タイトルは「日本医師会の病巣にメス、ワクチン接種はなぜ遅れたのか?中川会長を直撃すると……」とある。日頃からメディアがなんの疑いもなく、怒涛の勢いで垂れ流している「医療逼迫」という言葉に疑念を抱いていた。医療現場に逼迫感はないと思っているわけではない。逼迫しているのは大病院などごく一部ではないか、明確な証拠があるわけではない。そんな印象を抱いていた。そんな思いに追い討ちをかけたのが菅首相によるワクチン接種の大号令だ。それはある種無謀ともいうべき号令、命令だった。おそらく安倍前首相だったら決断できなかっただろう。ワクチンは手に入っても接種する医療従事者を確保するのが難しい。これが当時の一般的な見方だった。この辺の現場の動きをこの記事は丹念にフォローしている。日医の中川会長と菅首相の会談の後、接種者(医者等)にたいする日当の特別加算が決まったのだ。

東京都に例を取ると、特別加算によって1日に60回接種すれば、日当は17万5000円になるという。この日当の額はかつて、地方自治体が接種者を死に物狂いでかき集めているという記事の中で見たことがある。裏にこういうカラクリがあったのか。呆れるとはこのことだ。記事の筆者である辰濃哲郎たつの・てつろう)氏は、15年間にわたって日医を取材してきたジャーナリストだ。氏はいう。「自らの権益を守ろうとする日医の体質が浮かび上がってくる」と。100年に一度という災禍のなかで日医は「国民の命」ではなく「自らの権益」を守ろうとしていた。あってはならないことだ。そして日本の主流派メディアは「医療逼迫」という言葉を“錦の御旗”に、守銭奴ともいうべき「権益の擁護者」を擁護し続けてきた。日医の横暴はこれだけではない。あとは本文で確認を。問題は日医だけではない。権益守護派はいたるところにいる。なんとかならないか日本……。