【ワシントン時事】バイデン米大統領は予定通り、8月31日までのアフガニスタン駐留米軍撤収を強行した。しかし、出国を希望する米国民やアフガン人協力者らのすべてを退避させることはできず、中途半端な形の「終戦」となり、国内の批判を浴びている。

タリバンの電撃的アフガン制圧 地に落ちた米国のイメージ

 「米国最長の戦争」の終わりは軍最高司令官のバイデン氏ではなく、マッケンジー中央軍司令官によって告げられた。米軍機にしがみつく避難民の映像、テロによる13人の米兵死亡、無人機の報復攻撃による民間人巻き添え。いずれもテロとの戦いの「敗北」を印象付け、「見苦しくトラウマを残す」(AFP通信)ものとなった。

 バイデン氏は30日、演説や記者会見は行わずに声明のみを発表。「各軍トップと現地司令官は全員、退避作戦終了が兵士の命を守り、民間人の出国を確保するために最善だと進言した」と計画通りの撤収を正当化した。

 しかし混乱の中、国外退避を希望した米国人100~200人が空港への安全を確保できずに取り残された。アフガン人の数はさらに多い。ブリンケン国務長官は会見で「切れ目ない退避支援を続ける」と強調したが、共和党下院トップのマッカーシー院内総務は「バイデン氏はテロリストのなすがままに、米国人を置き去りにしようとしている」と糾弾した。

 ロイター通信などが27~30日に行った世論調査によると、撤収計画について「不支持」は51%で「支持」の38%を上回った。「すべての米国民とアフガン人協力者が退避するまで軍は残るべきだ」との回答は49%に上り、「軍は直ちに撤退すべきだ」の13%よりはるかに多かった。

 もっとも、同じ調査で「米国が直面する最大の課題」を尋ねたところ「新型コロナウイルス」が35%、「経済」が18%だったのに対し、「アフガン戦争」は10%にとどまった。米国民の関心は高いとは言えず、撤収への批判が直ちに政権の不安定化に直結するとは限らない。

 新型コロナの感染再拡大や、ハリケーン「アイダ」の被害からの復旧など、バイデン氏は国内の難題にも直面。米国時間31日午後(日本時間9月1日午前)の演説で、今後の政権運営についてどのような展望を示すのか、関心が集まっている。