- インフレ高進がバイデン氏の野心的経済計画の妨げとなる可能性
- 新興国市場から資金が流出する恐れ-IIFチーフエコノミスト
新型コロナウイルス感染拡大に起因するインフレは世界中で見られる。しかし、米国のインフレ高進は特に先進国の中では「異常値」のように見え始めている。
エコノミストはその背景について、パンデミック(世界的大流行)に際して米国が他のどこよりも大規模な財政刺激策を導入したからだと指摘する。インフレ高進は長くは続かないとの見方が大勢ではあるものの、現在の高い水準での物価上昇自体が問題を引き起こすかもしれない。国内ではバイデン大統領の野心的経済計画の妨げとなる可能性がある。影響は国外にも波及する恐れがある。
ブルームバーグの調査によると、14日発表の8月の米消費者物価指数(CPI)は前年比の伸び率が3カ月連続で5%超と予想されている。他の先進国でも物価上昇は見られるが、ここまで急激な伸びではない。
景気過熱の可能性示す手掛かり、インフレ指標だけが頼りの存在か
物価上昇ペースに差が出ている背景には、米国が他の多くの国・地域に比べてワクチン接種や経済再開で先行し、需要がいち早く回復したことにあるかもしれない。
ただ、米国が突出している要因について、ハーバード大学のジェーソン・ファーマン教授は「私自身は財政刺激策の方をより重視している」と語る。国内総生産(GDP)の約4分の1に相当する大型経済政策により、米国の景気はコロナ禍の底から想像以上に早く抜け出すことができた。
国際金融協会(IIF)のチーフエコノミスト、ロビン・ブルックス氏は、こうした財政刺激策主導のインフレが早期の金融引き締めにつながれば、米国の異例の景気回復が他の国・地域にとっては問題になる可能性があると指摘。2013年の「テーパータントラム」の時と同様に新興国市場から資金が流出する恐れがあるとの見方を示した。
仮にインフレ高進が一過性のものだとしても、バイデン氏が掲げる3兆5000億ドル(約385兆円)規模の税制・支出計画を妨げる要因になるかもしれない。同計画の実現にはマンチン上院議員のような民主党穏健派の賛成票が必要だが、同議員は物価高騰を理由に支出規模の縮小を求めている。
米税制・支出計画、27日までの下院採決は非現実的-マンチン上院議員
原題:U.S. Inflation Starting to Look Like a Stimulus-Led Outlier (1)(抜粋)