【ソウル=桜井紀雄】北朝鮮の朝鮮中央通信は16日、北朝鮮が新たに創設した「鉄道機動ミサイル連隊」によるミサイル発射訓練を15日に実施したと報じた。ミサイルは中部の山岳地帯から発射され、約800キロ先の日本海にある標的を「正確に打撃した」としている。
北朝鮮は15日午後0時半すぎに中部、陽徳(ヤンドク)周辺から短距離弾道ミサイル2発を発射。日本政府は約750キロ飛行し、日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下したとの見方を発表していた。同通信によると、連隊は15日未明から山岳地帯に展開して訓練を行ったという。
朝鮮労働党機関紙、労働新聞電子版は16日、列車に取り付けられた発射台からミサイルを打ち上げる場面の写真を掲載。形状から3月にも発射した変則軌道で迎撃をかわす新型短距離弾道ミサイル「KN23」の改良型とみられる。
飛距離が800キロなら、日本の一部も射程に収める。移動が容易な鉄道を使ったミサイル発射で、北朝鮮の奇襲攻撃の脅威は一層高まったことになる。
発射訓練を指揮した朴正天(パク・チョンチョン)党書記は、列車からの発射について「同時多発的に(敵に)甚大な打撃を加えられる効果的な攻撃手段だ」と強調した。連隊は1月の党大会で示された国防戦略の一環として創設されたもので、朴氏は早い時期に実戦運用を重ね、旅団へ拡大させる方針も示した。
一方、金正恩(キム・ジョンウン)総書記の妹、金与正(ヨジョン)党副部長は15日夜、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が兵器実験という「自衛的な活動」を「挑発」と呼んだとして強く批判する談話を発表。韓国大統領が中傷するなら対抗行動に出ざるを得ず、南北関係が「完全破壊へと突き進むだろう」と警告した。