「世界は今、クリーンエネルギーへの移行期における最初の大きなエネルギー危機に直面している」。これはブルームバーグ(BB)が今朝配信した記事の書き出しだ。タイトルは「世界的なエネルギー危機、クリーン電力時代の弱みを浮き彫りに」となっている。脱炭素社会に向けて太陽光などクリーンエネルギーへの転換を目指す動きが世界中で活発化しているが、その裏で化石燃料などCO2を大量に排出する電力源の削減が進み、いくつかの国が一時的なエネルギー危機に直面しているという内容だ。主力電源の転換に絡む一時的な混乱ならなんとかやりすごすことができそうだが、BBによるとこの動きは「今後も繰り返される」と指摘する。あちらを立てればこちらが立たず、二項対立の時代に我々はいるようだ。

この欄でも何度かとりあげているが、英国や中国はいま深刻なエネルギー不足に直面している。家庭や工場で頻繁に停電が起きているようだ。電力不足は生産活動の停滞を招き、電気が中心の家庭生活は停電した途端に危機に直面する。何もかもスムーズにはいかなくなるのだ。CO2をふんだんに使った電力供給システムの上で我々は豊かな生活を謳歌してきた。そのエネルギー源に改革の嵐が迫る。柱はクリーンエネルギーへの転換。太陽光や水力、風力といった再生可能エネルギーやCO2排出量が少ない天然ガスへの転換が急ピッチで進み始めている。それにコロナ禍で停滞気味だった需要が一気に回復、エネルギー需給があっといまに逼迫し始めた。だがエネルギー源の転換は一気に進まない。その一方で脱炭素の動きはあっという間に広がる。需給逼迫は目に見えている。

BBによるとエネルギー問題の世界的権威であるダニエル・ヤーギン氏は現在の状況について、「エネルギー転換がいかに複雑なものになるかとの警告だ」と指摘する。エネルギー源をCO2に頼ってきた大量供給システムの転換は一筋縄ではいかない。必然的に需給ギャップが発生しやすくなる。加えて、需要はこれからも増大する一方だ。ブルームバーグNEFによると「2050年までに世界の電力消費量は60%増加する」と予測している。電力が足りないという状況は一時的な現象ではなさそうだ。おそらくずっと続くだろう。その結果としてBBは「エネルギー価格上昇によるインフレ、所得格差の拡大、停電の脅威、経済成長の阻害という状況がもたらされる」と警鐘をならす。岸田政権はこの危機にどう対応するのだろうか。