• 委員会は昨年の総会の公正性に踏み込む判断すべき-退任した元幹部
  • 報告に対する反論書を東芝側に提出済み、法令違反なかった-元幹部

東芝の昨年の定時株主総会は公正に運営されたものとはいえないと結論づけられた調査報告書を受けて退任した元幹部2人が、同報告書の不備を指摘し、東芝側に反論書を提出したことを明らかにした。東芝が今月中にも公表予定の「再調査」では、証拠に基づいた事実認定や法的評価がされるべきだと訴えた。

  6月25日付で退任した豊原正恭元副社長と加茂正治元上席常務は、ブルームバーグとのインタビューで、法令・規則やコーポレートガバナンス(企業統治、CG)コードの具体的な違反項目が明記されていないのに同報告書には法令違反があったかのように書かれていたのは問題だと指摘した。メールのつぎはぎによる推論も散見されたという。

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  一つの例として取り上げたのは、同報告書が指摘した「東芝が経産省に総会でのアクティビスト対応の支援を要請し、同省といわば一体となって株主対応を行っていた」とされた内容。両氏は、安全保障面で重大な支障を及ぼす事態が発生しないよう情報収集などを行ったもので、改正外為法の趣旨にも反していないと正当性を訴えた。

  ここで使われた「一体」の表現についても、政策目的達成のために行動する経産省と、企業価値向上の観点で行動する東芝は立場が異なるため、「一体」と捉えることはできないはずなどと反論。昨年の総会が法令・規則違反やCGコード違反なく、公正に行われたと主張した。

  現在、東芝は外部有識者らで構成されるガバナンス強化委員会を設置して再調査を行っている。豊原氏は、法令・規則やCGコードに抵触したかの有無を含め、昨年7月の株主総会が公正に行われたか否かに踏み込む判断を示すべきだと訴える。

  同報告書は、東芝のガバナンスを問題視する筆頭株主のエフィッシモ・キャピタル・マネジメントの求めにより調査が行われ、作成された。担当した弁護士の1人、中村隆夫氏は両氏の反論に対してコメントを控えた。

  東芝の広報担当者は、現在強化委員会で客観的で透明性のある徹底した真因・真相の究明を行い、責任の所在の明確化や再発防止策を取りまとめていると説明。反論書についてはコメントを差し控えたいとしている。    

  エフィッシモは広報代理を通じ、ガバナンス上の是非に関する評価は、法令に違反するか否かに関する評価とは基準が異なると指摘。独立した調査者による報告書の内容を踏まえ、株主がおのおの投資先のガバナンスについて評価し、その後の議決権行使を行うことは健全であると考えると述べた。

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