ロンドンに本拠を置く法律事務所、シモンズ・アンド・シモンズでは電話が鳴りっぱなしだ。

  業界規制に関してヘッジファンドなど資産運用会社の代理人を務めるルシアン・ファース弁護士は、投資会社が環境や社会への配慮を誇張するのを防ぐための新規則によって、自分の仕事が様変わりしたと話す。

  「大勢の米国の運用者らと話をした。勤務時間の非常に大きな部分をこれが占めている」という。

ルシアン・ファース氏Source: Simmons & Simmons LLP

  欧州連合(EU)は今年3月、環境・社会・ガバナンス(ESG)の観点から金融商品の特性を評価、開示することを運用会社に義務付ける「サステナブルファイナンス開示規則(SFDR)」を導入した。

  以来、新規則が自分たちの仕事にどう影響するかの情報を求め、ニューヨークや香港の運用会社が同法律事務所にコンタクトしているという。それというのも、EUが設定したこの「反グリーンウォッシュ」規則が、推定35兆ドル(約4000兆円)に上る世界のESG市場の標準となりつつあることに運用会社が気付き始めたからだ。

  SFDRの「触手は長い」とファース氏は述べた。

  S&Pグローバルは、SFDRの順守を迫られるEU外の投資会社の規模は計3兆ドル超とみている。この推計が対象としているのは株式を上場している運用会社だけであり、実際にはさらに膨らむ可能性が高い。ファ―ス氏はEU外の依頼人に対し、販売資料のいずれかがEU諸国を対象としているならば「そのファンドについてのSFDR開示が必要だ」と伝えている。

ブルームバーグ

  SFDRの影響が世界に広がるのを、欧州の資産運用会社は目の当たりにしている。

  アリアンツ・グローバル・インベスターズ(GI)のサステナブル投資オフィス責任者、ニナ・ホジッチ氏は、ファンドマネジャーや非営利団体とともに欧州委員会による規則策定を支援したグループの一員だ。世界で6330億ユーロ(約83兆6000億円)の顧客資金を預かるアリアンツGIには、アジアと米国の規制当局と投資家が「EUでの展開を見守っている」ことを示す動きが見えているという。

Source: Allianz Global Investors GmbH

  「雪だるま効果は、一部の人が考えるよりも早く起こる可能性がある」と同氏は指摘。 「SFDRのように導入された後すぐに迅速に取り入れられたものは見たことがない」と話した。

  SFDRは資産運用会社に対し、ESGを銘打った商品が、環境目標に貢献する持続可能な経済活動の基準や条件を定めた「EUタクソノミー」に合致している証明を求める。

  さらに、EU内の顧客にサービスと情報を提供する際にEU規則を順守するよう世界中の運用会社に求めている。

  欧州の運用会社は既に、あやしげな商品をサステナブルとして売り込むことをやめている。SFDRの下では、これまで多用されていたような誇大広告は許されないからだ。かつては業界の定番だった「ESGインテグレーテッド」などという無意味な表現は消えつつある。

  モーニングスターのサステナビリティーリサーチ・グローバルディレクター、ホーテンス・ビオイ氏は、インテグレーションなどという言葉は「全てを意味するし何も意味しない」として、それよりも「具体的で明確な」ものが必要だと述べた。

  あいまいなラベルが取り除かれることで、ESG市場では調整が進んでいるようだ。欧州のファンド業界では2020年末までの2年間に、2兆ドル相当の金融商品からESGのラベルが外された。厳格な規則の導入を見込んだ動きだ。これを一因に、欧州のESG資産の規模は現在、米国を下回っている。

  同様の調整が米国でも起こるかどうかは分からないが、シモンズ&シモンズのファ―ス氏はESGを巡る環境の変化の速さに驚いたと話す。資産運用業界は今や、ESGの重要性を強く認識しており、反グリーンウォッシュ規制は潜在的な法的リスクに関して全く新しい世界を開いたと同氏は述べた。

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原題:Fund Managers Brace for Correction as Greenwash Rules Go Global(抜粋)