【グラスゴー時事】英グラスゴーで開かれた国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)は、成果文書に盛り込まれるはずだった「石炭火力発電の段階的廃止」という表現が、採択直前に中国とインドの要求で「段階的削減」に修正された。多くの国々が失望を表明したが、シャーマ議長は会議の決裂回避を優先した。2015年の温暖化対策の国際合意「パリ協定」以来、最も重要と目された気候変動の成果文書は、土壇場で主要部分の表現が大きく後退した。
気候変動対策、分断あらわ 主要排出国に強まる逆風―COP26
COP26はこの部分をめぐって交渉が難航。12日までの会期を延長し、13日夜まで交渉が続いた。「脱石炭」をめぐる書きぶりはこの過程で弱められ、「排出削減対策をしていない石炭火力発電の段階的廃止へ努力を加速する」という表現で採択を目指した。
しかし、採択直前に中印が反対を表明し、さらに弱い表現となる「段階的削減」に変更するよう主張した。中印は電力の大半を石炭火力発電に依存している。
最終盤での提案に、欧州や温暖化の影響を受ける太平洋の島国などからは「失望した。世界が必要としているのは石炭の段階的削減ではなく、段階的廃止だ」(スイスのソマルガ環境相)などと批判が相次いだ。しかし、会議は全会一致が原則で、一国でも反対すれば決裂するため、この修正を受け入れざるを得なかった。
シャーマ議長は言葉を詰まらせながら、「深い失望を理解するが、協定を守ることも不可欠だ。この展開を深くおわびする」と謝罪。会場からは拍手が起こった。環境保護団体グリーンピース・インターナショナルは声明で「彼らは言葉を変えたが、この会議が発したシグナルを変えることはできない。石炭の時代は終わるのだ」と述べた。