政府の経済対策の規模が財政支出ベースで55.7兆円程度となったことが、ブルームバーグが入手した最終草案で分かった。19日に閣議決定する。過去最大規模の経済対策となり、岸田文雄首相の経済財政運営の成否を左右する。
財政支出のうち、国費は43.7兆円。2021年度補正予算案に31.9兆円(一般会計31.6兆円、特別会計0.4兆円)を計上する。22年度予算案に新型コロナ対策の予備費として5兆円を盛り込む。民間資金を加えた事業規模は78.9兆円。
財政支出 | 事業規模 | |
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新型コロナの拡大防止 | 22.1兆円 | 35.1兆円 |
社会経済活動の再開と次なる危機への備え | 9.2兆円 | 10.7兆円 |
「新しい資本主義」の起動 | 19.8兆円 | 28.2兆円 |
防災・減災など安全・安心の確保 | 4.6兆円 | 5.0兆円 |
合計 | 55.7兆円 | 78.9兆円 |
財政支出は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて2020年4月に決定した緊急経済対策の48.4兆円を上回り、過去最大規模となる。18歳以下への10万円相当の支給や中小事業者への給付金、原油高に苦しむ関係業界への支援策を盛り込む。
岸田首相は10日の会見で「来週中に数十兆円規模の経済対策を取りまとめる。年内できるだけ早期に補正予算を成立させ、国民の皆さんに一刻も早く届ける」と語っていた。一方、党内には財政再建にも配慮すべきだとの意見もある。
UBS証券の足立正道チーフエコノミストは、10万円給付について「消費に回る部分は限定的と考えられるため、財政による景気の押し上げ効果は限られる」と指摘。事前の報道で経済対策の事業規模は40兆円ぐらいと言われていたのに比べると驚きだが「GDPの見通しが大きく変わることはない」と述べた。
日本のコロナ禍からの回復は道半ばで、7-9月期の実質国内総生産(GDP)速報値は前期比年率で3.0%減と、2四半期ぶりにマイナスに転じた。米国(前期比年率2.0%増)や中国(前年同期比4.9%増)に比べて遅れが際立つ。