[東京 19日 ロイター] – 岸田文雄首相は19日、内閣記者会のインタビューに応じ、今回の経済対策の財源について「赤字国債を含め、あらゆる手段、予備費等を総動員して考えていかなければならない」と述べた。今後の金融政策については、日銀の判断に委ねるとした上で、政府は賃金の持続的な上昇を考えていくことを大事にしていきたいと語った。

政府の新たな経済対策では財政支出が過去最大の56兆円規模となっている。首相は、今は緊急時であり、国民の命や暮らしを守るために必要なものをしっかり用意しなければならない、と説明。対策の財源には赤字国債をはじめ、あらゆるものを動員するとの考えを示した。その後、経済が再生すれば、その先に財政規律を検討する局面になるとした。

今年の「骨太の方針」では2025年のプライマリー・バランス(PB)の黒字化目標を堅持するとしている一方、年度内にコロナの経済財政への影響の検証を行って目標年度を再確認するという但し書きもあると指摘。PBについては、その方針に従って再確認、検証していくと述べた。

首相は、経済が再生してきた場面で税収がどのようになっているかも財政を考える上で重要なポイントになると述べた。首相自身は消費税について「触ることは考えていない」と明言しつつ、今後の税制は「新しい資本主義実現会議」での議論に基づいて、与党税調でも議論することになるとした。そうした仕組みの中、金融所得課税や内部留保課税についても考えていきたいと語った。

米国では米連邦準備理事会(FRB)が量的緩和政策の縮小に動いたが、日銀は大規模金融緩和の継続姿勢を示している。首相は、日銀について、2013年に公表した「共同声明」の考え方に則り、引き続き物価安定目標2%の実現に向けて努力する方針を明らかにしていると指摘。日銀の今後の取り組みについては「これはもう日銀が判断されること」と語った。

首相は、こうした日銀のスタンスを念頭に置きつつ、政府においては「成長と分配の好循環」を通じて賃金の持続的な上昇を考えていくことを大事にしていきたいと述べた。日銀の取り組みと政府の賃金引き上げの取り組みの相乗効果によって経済の発展を期待したいとの考えを示した。

<憲法改正、来年の参院選の争点に>

岸田首相は、自民党においては、党改革と憲法改正の2つが重要なテーマになるとの認識を示した。今後の具体的な改正の道筋を考えると主戦場は国会での議論になると述べた。

来年の参院選で憲法改正を争点に掲げるのかと問われ、「従来から自民党の選挙公約の重点項目の一つに憲法を加えており、こうしたスタンスは変わらない」と語った。

首相は日韓関係について「韓国との関係を安定させることは大事なこと」との考えを示した一方、国際的な約束はしっかり守られるべきだという強い思いもある、と述べた。

(杉山健太郎)