【ワシントン時事】原油やガソリン価格の高騰を受け、主要消費国が石油備蓄を放出する協調行動を検討している。世界経済の失速を懸念するバイデン米政権が日本や中国などに要請。一時的に供給量を増やして価格を抑制する狙いだ。最大の原油輸入国である中国を巻き込み、産油国に増産圧力をかける思惑もある。米中新冷戦の様相を呈する中、協調が実現すれば極めて異例だ。

岸田首相、備蓄石油の放出検討 米国などと連携、原油高対策

 新型コロナウイルス危機からの景気回復に伴う需要拡大を背景に、原油相場は10月に約7年ぶりの高値を付けた。米政権は石油備蓄の放出について「中国をはじめ幾つかの国と協議している」(サキ大統領報道官)と強調。原油輸入額で上位のインドと韓国にも打診した。中国は放出する方向とされる。

 日本も国家備蓄の協調放出に向けて調整に入った。岸田文雄首相は20日、記者団に「法的に何ができるか検討を進めている」と語った。現行法は原油価格の抑制を目的とした放出を想定していないが、法令が定める備蓄目標を超える分なら実施可能との判断に傾いている。日本の頭越しに米中が接近することへの警戒感もありそうだ。

 主要消費国の協調放出は、石油輸出国機構(OPEC)加盟・非加盟の産油国で構成する「OPECプラス」にとって一段の増産圧力となる。日米の要請に応じず大幅増産を見送ってきた経緯があり、12月2日の次回会合に注目が集まる。

 バイデン大統領は来年秋の中間選挙に向け、家計や企業の懐を直撃している物価高の抑制を最優先課題に掲げる。ただ、産油国側には、化石燃料の削減を提唱する米政権の政策が世界的な原油供給不足に拍車を掛けているとの意識も根強く、米国が主導する協調放出の成否は見通せない。