中国の女子プロテニス選手、彭帥さんが張高麗元副首相との長年の性的関係を告白してから消息不明になっていた約2週間、国連やホワイトハウス、女子テニス協会、一部の有名スポーツ選手は彭さんの安否に懸念を表明していた。そして、身の安全を主張する中国当局の公式見解には懐疑的だった。
一方、来年2月に北京冬季五輪の開催を控える国際オリンピック委員会(IOC)は違ったようだ。IOCは21日、バッハ会長と彭さんによる約30分間のビデオ通話を行い、中国側の主張を支えた。ビデオ通話にはIOCアスリート委員会のエンマ・テルホ委員長と中国のIOC委員を務める李玲蔚氏も同席した。
消息不明の中国人テニス選手、バッハ会長とオンライン面談-IOC
IOCは彭さんとの面談について、「無事で健康上の問題もなく、北京の自宅で暮らしているとの説明があった。今はプライバシーを尊重してほしいとのことだ」と声明で説明。テルホ氏は「彭帥の元気な姿を見られて安心した。それが私たちの最大の心配だった」と述べた。
しかしIOCは、重要な懸念事項については言及しなかった。なぜ他の人は彭さんと連絡が取れないのか、彭さんは自由に移動できるのか、なぜ自身のソーシャルメディア「微博(ウェイボ)」のアカウントに投稿しないのか、なぜ独立系メディアとは話そうとしないのか、などだ。
さらなる情報を求める質問に対し、IOCは「現時点」では声明に追加することは何もないと電子メールで回答した。
北京五輪開催まで70日余りとなった今、IOCの声明は彭さんの状況についての疑問を増しただけでなく、五輪の経済的な実行可能性を守ることが最優先というIOCに対する評判を裏打ちした格好だ。
米パシフィック大学のジュールズ・ボイコフ教授(政治学)は「IOCは中国との協力については長らく、故意にだまされやすいところを見せてきた」と指摘。五輪に関する著書4冊を執筆した同教授は「IOCは基本的に開催国に敬意を払い過ぎている。中国で起きていることに関する難しい真実を持ち出した市民を消すという長年の実績がある国に対してだ」と語った。
国際社会の懸念払しょく図る中国、国内では彭帥さんの情報遮断 (1)
原題:Olympics Body Faces Scrutiny After Call With China Tennis Star(抜粋)