[ワシントン 3日 ロイター] – 米労働省が3日発表した11月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月より21万人増加した。55万人増を見込んでいた市場予想を大幅に下回り、昨年12月以降で最も低い伸びとなった。小売業や州・地方政府の教育部門での雇用減が響いた。ただ、失業率が1年9カ月ぶりの低水準に改善し、労働市場の急速な引き締まりを示唆した。
企業が賃金を引き上げ、手厚い失業手当が終了し、学校が完全に再開されたにもかかわらず、何百万人もの失業者が労働市場に戻っていないとみられる。予想は、30万6000人増から80万人増まで幅があった。
連邦政府による失業給付が9月上旬に終了して以来、11月は全く反映されていない月として2カ月目となる。10月の雇用者数の増加幅は、当初発表の53万1000人から54万6000人へ上方改定された。雇用者数は2020年2月のピーク時を390万人下回っている。
11月の失業率は4.2%と10月の4.6%から改善し、2020年2月以来の低水準となった。
FWDBONDSのチーフエコノミスト、クリス・ラプキー氏は「失業率の低下が示すように米経済は実質的に過熱状態にある。11月のわずかな雇用増に惑わされてはいけない」と述べた。
ボストン・カレッジのブライアン・ベスーン教授は「失業率は米連邦準備理事会(FRB)による完全失業率の推定値に向かって比較的急速に近づいている」と指摘した。
賃金は引き続き上昇した。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は数日前に、12月14─15日に開かれる金融政策決定会合でテーパリング(量的緩和の縮小)の加速を検討すべきだと議会で証言していた。
シティグループのチーフエコノミスト、アンドリュー・ホレンホースト氏は、今回の雇用統計はFRBが12月の会合でテーパリング加速を決定するのに十分すぎるデータだと指摘。「さらに失業率がおそらく今後数カ月で4.0%を下回ると見込まれることからFRBの最初の利上げは6月またはそれ以前に行われるだろう」と述べた。
業種別では小売業が2万0400人減。州・地方政府の教育部門は1万2600人減となった。政府全体では2万5000人減と4カ月連続で減少した。
レジャー・接客業の雇用は振るわず、2万3000人増にとどまった。前月は17万人増だった。
専門職・企業サービスの雇用者数は9万人増加した。運輸・倉庫業は約5万人増、建設業は3万1000人増加だった。製造業の雇用者数も3万1000人増加した。引き続き、労働力不足が雇用の足かせとなっている。
時間当たり平均賃金は前月比0.3%増、前年同月比4.8%増となった。平均週間労働時間は34.7時間から34.8時間に増加した。
雇用者数の増加が小幅だったため、第3・四半期に減速した経済が第4・四半期により力強く成長することへの期待感が薄れる可能性がある。個人消費や製造業の活動は好調なものの、新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」が明るい展望にリスクをもたらしている。
オミクロン株の詳細はほとんど分かっていないが、デルタ変異株の影響で第3・四半期の経済成長率が1年超ぶりの低水準に落ち込んだ経験から、雇用やサービス需要が減速する可能性が高い。
9月末時点の求人は1040万件。新型コロナのパンデミック(世界的大流行)による不況で失業した何百万人ものアメリカ人が依然として労働市場に戻っていないが、一部調査では復帰する兆しも見えている。労働参加率は10月の61.6%から11月は61.8%に上昇した。労働力人口は、パンデミック(世界的な大流行)前の水準を240万人下回っている。
エコノミストによると、株式市場や住宅価格の高騰によって多くの米国人の資産が増加し、早期のリタイアを促した。また、家計の貯蓄が大幅に増加し、自営業者も急増している。