ロシアがウクライナとの国境4カ所に、総勢17万5000人の軍隊を結集させていると米国は国際社会に訴えている。イラン核合意再建に向けた国際交渉は、イランの強行姿勢によって交渉が難航していると米国は主張する。プロテニスプレイヤーである彭帥(ほうすい)さんに対する性的暴力事件で米国は、北京五輪の外交的ボイコットを検討している。国際政治の様々な問題を米国が仕掛けていることは間違いないだろう。米国の主張に理があるかどうかはひとまず置くとして、国際政治をめぐる喧騒に熱が帯びてきた。密室で行われている駆け引きの仔細は知る由もないが、表の世界で明らかになっている事実関係をつなぎ合わせるだけで、国際政治の大まかな動きは類推できる。そんな類推を刺激する出来事が今週相次いで行われる。6日のロシアとインドの首脳会談、翌7日の米ロ首脳会談、そして9日には「民主主義サミット」が実施される。

ロシアとインドは長年にわたって友好関係を維持してきた。インドはロシアから大量の兵器を購入している。隣国中国とは「去年北部ラダック地方の係争地帯で双方の軍が衝突して以降、対立が続いている」(NHK)。中国との対立関係が深刻化する米国は「クワッド」(米国、日本、インド、豪州)を結成し、中国包囲網構築に精を出す。中国けん制で思惑が一致する米国とインド。対するロシアは長年の盟友関係にあるインドとの親密さをアピールすることで米国をけん制する。バイデン大統領はインドとロシアの接近に警戒感を強め、クワッドの延長線上で「民主主義サミット」にインドを招待。関係強化を計ってロシアに対抗する。置き去りの中国はどうするのかと思っていたら、「中国の民主」と題した白書を公表、共産党主導の「中国式民主主義」の特色と成果を強調した。バイデン大統領が主導する「民主主義サミット」を意識した対抗策だという。人権抑圧に事欠かない中国が民主主義だという。中国人民には失礼だと思いつつ、思わず吹き出してしまった。間違いなくお笑いネタだ。

国際政治には国家の命運が付きまとう。首脳会談に臨む各国のトップはのしかかる重圧に耐え、緊張の日々に身を晒しているのだろう。同情を禁じ得ない気がしないこともない。だが、よくよく見るとやっていることは漫画チックだ。イランとの核合意の再開交渉では相変わらず「核の抑止力」が幅を利かせている。北朝鮮の金正恩並みの思考力だ。ロシアはウクライナ国境の4カ所に軍隊を集結させているという。米国は年明け早々にも侵攻の可能性があると強調する。事実なら「何を考えている、プーチン」と言いたくなる。プーチンにすれば西側の軍事的脅威を強調するのだろう。IT技術が指数関数的に進化し、コロナウイルスにゲノム編集で対抗できる時代がやってきている。にもかかわらず国際的な政治指導者の思考中枢は、いまだに旧約聖書の「目には目を、歯に歯を」の世界にとどまっている。挙げ句の果ては中国の元最高幹部・張高麗前副首相の性的暴力だ。国際情勢はうんざりすることだらけだ。