[東京 10日 ロイター] – 自民・公明両党は10日午後、2022年度税制改正大綱を正式に決定した。岸田政権が掲げる「成長と分配の好循環」の実現に向けて、企業の積極的な賃上げを促すため優遇税制を拡大。一方、金融所得課税については、来年以降の検討課題とした。
自民党税制調査会の宮沢洋一会長は会見で「金融所得課税、いわゆる1億円の壁といった問題にどう対応するのかも来年以降、検討していかなければいけない課題」と発言した。
また、宮沢税調会長は、今回の賃上げ税制により1000億円台半ば、後半の減収を見込んでいると説明。固定資産税は450億円程度の減収の見込みで、住宅ローン減税の税収への影響はほとんどないと述べた。
来年度の税制改正大綱では企業の賃上げを支援するため、法人税の税額控除率を大企業で最大30%に、中小企業で最大40%に引き上げるとした。従業員の給与や教育訓練費の増加分に応じて控除率を拡大する。
また、賃上げに消極的な企業は投資減税の対象外とする。継続雇用者の給与総額の前年度比増加率が来年度は0.5%以上、23年度は1%以上とならない場合は、研究開発税制や特別税額控除の規定を適用しないとした。
金融所得課税については、高所得者層は所得に占める金融所得等の割合が高く、所得税負担率が低下する状況がみられると指摘。「これを是正し、税負担の公平性を確保する観点から、金融所得に対する課税のあり方について検討する必要がある」とした。
その上で、投資環境への配慮、海外の制度や市場への影響も踏まえ、「総合的な検討を行う」とした。
住宅ローン減税について、今年末で期限が切れる制度を2025年まで4年間延長し、控除率をローン残高の1%から0.7%に引き下げる。控除期間は、新築住宅は13年間、既存住宅については10年間とする。
税制改正大綱について、経団連の十倉雅和会長(住友化学会長)は「新政権の目指す成長と分配の好循環の実現、新しい資本主義の達成に寄与する」と評価。賃上げ税制を巡っては、収益が増大した企業に賃上げに向けた積極的な検討を求めていくとしながら、今回の「税制措置はその後押しとなる」とコメントした。