【ニューヨーク時事】未公開企業の買収を目的とし、自らは具体的な事業を持たない「特別買収目的会社(SPAC)」の米国での上場件数が、2021年に604件と、前年の2.4倍に達する見通しとなった。19年比では10倍以上となる。ただ、今年後半は陰りが見えており、「SPACバブルは既にしぼんだ」との声も出ている。
米調査会社ルネサンス・キャピタルが集計した。資金調達額も計1435億ドル(約16兆3000億円)と、前年から倍増した。SPACの上場は日本では認められていないが、新興企業支援の一環として解禁が議論されている。
SPACは上場後、原則2年以内に有望な未公開企業を見つけ出して買収、合併し、買われた側が存続企業となる。自らは具体的な事業を持たないため、「空箱会社」「白紙小切手会社」などとも呼ばれる。買収される企業から見れば、面倒な手続きを省き、短期間で上場できる利点がある。
SPACは、金融緩和による「金余り」を背景に20年に急増。21年も当初は勢いを維持していたが、過熱を警戒した米証券取引委員会(SEC)が監視強化に乗り出すと失速した。1件当たりの資金調達額は前年から約2割減り、大型上場も少なくなった。
一方、SPACとの合併を通じた上場件数は187件と、前年から大幅に増えた。新興の電気自動車(EV)メーカーやIT企業の利用が目立つ。ただ、ローズタウン・モーターズやルシッド・グループといった米EVメーカーで、情報開示などをめぐる不正疑惑が相次ぎ浮上。SECが調査に入る事態となった。
規制強化に向けた動きが進む中、新興メディアの米バズフィードやシンガポールの配車サービス大手グラブは今月初旬、SPAC経由で上場した直後に株価が急落した。個人を中心に投資家離れを指摘する声も出ている。