千田 恒弥

旧宮家の男系男子の皇籍復帰案などをまとめた政府有識者会議の報告書に、野党第一党の立憲民主党が批判を強めている。平成29年成立の譲位特例法の付帯決議が検討を求めた「女性宮家の創設」などが反映されていないとみているためだ。政府は近く国会に報告する見通しだが、具体化に向けた協議が始まる前から暗雲が漂っている。

立民は27日、国会内で「安定的な皇位継承に関する検討委員会」の準備会合を開き、来年1月に本格的な議論に入ることを決めた。委員長には野田佳彦元首相が就き、民進党時代に譲位特例法の制定に関わった馬淵澄夫国対委員長や長浜博行元環境相が中心となって検討を進めていくことも確認した。

政府の報告書は、皇族数の確保策として①皇族女性が婚姻後も皇室に残る②旧宮家の男系男子の養子縁組などによる皇籍復帰-の2案を示している。

野田氏は報告書について、「安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等」の検討を求めた付帯決議に正面から応えていないと批判。「相当、論点が多いので党として対応をまとめ、国会の中で主導的な役割を果たしていきたい」と言及した。

野田氏は「女性宮家という言葉が(報告書に)全く出てきていない」とも言及した。野田政権が平成24年にまとめた「論点整理」で女性宮家に触れた経緯があり、野田氏は民進党幹事長だった特例法の制定時も、与党に女性宮家を盛り込むよう迫っている。

今回の報告書は「これまで歴代の皇位は、例外なく男系で継承されてきた」と明記し、母方のみに天皇の血筋を引く女系の継承には後ろ向きな内容となった。立民は女性天皇や女系の容認に前向きで、これが報告書への批判を強める一因ともなっている。

内閣官房幹部は女性宮家を書き込まなかった理由を「法制度上の言葉ではない」と説明する。報告書は具体的な制度設計を見越して作成したとみられ、定義が曖昧な言葉を使うことを避けた面もある。

「いたずらに政局にするつもりもないが、来夏に参院選が控えている。どこまでやるか難しい」

立民幹部は、次期参院選で皇室に関わる課題を争点化する可能性をにおわせた。自民党は「落ち着いた中で議論ができる環境を、政党としても国会としても作っていきたい」(福田達夫総務会長)と訴えるが、政局に巻き込まれず、静謐(せいひつ)な環境を整えられるかどうかは不透明だ。

さらに皇位継承論にこだわりのある野田氏が乗り出してきたことで、報告書の趣旨が制度設計に十分反映されない可能性も出てきている。(千田恒弥)