【ワシントン時事】覇権争いの様相を呈する米国と中国の対立は激しさを増している。競争と協調を対中政策の基本とするバイデン米大統領は、2月の北京冬季五輪の「外交ボイコット」などで圧力を強める一方、「衝突回避」に向けた危機管理も模索する。だが、人権問題や台湾情勢など、対立の火種はくすぶり続けている。

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 ◇互いに内政優先

 バイデン氏にとって今年最大の政治課題は11月の中間選挙勝利で、経済政策など内政最優先だ。外交面でもウクライナ情勢やイラン核問題に手を焼いており、これ以上の米中対立激化は避けたいのが本音。「米中は競争を衝突に転じさせない責務がある」と繰り返すのは、議会超党派が支持する対中強硬姿勢を保ちつつも、対立が軍事的な緊張を助長しないようにするためだ。

 中国の習近平国家主席も、北京五輪や今年秋の共産党大会を控え、米国との対立先鋭化は望んでいないとみられる。スタブリディス元欧州連合軍最高司令官はブルームバーグ通信への寄稿で「2022年は(米中対立の)小休止になるかもしれない」と指摘する。

 米中は昨年、高騰する原油価格抑制のために戦略石油備蓄放出では足並みをそろえた。バイデン氏と習氏は11月のオンライン会談で、国防当局高官らによる対話を進める考えで一致している。今後も、利害が重なる分野での協力や危機管理策の議論が進む可能性はある。

 ◇覇権争い継続

 ただ、技術覇権、貿易摩擦など多面的な競争基調は変わらない。国家は生存のために覇権を目指すという「攻撃的リアリズム」理論で知られるシカゴ大のジョン・ミアシャイマー教授は、中国が成長を続ければ、東アジアから米国を追い出して地域覇権を追い求めると指摘。中国の「平和台頭」は不可能として、将来の米中衝突を予測する。

 ミアシャイマー氏は、米中関係を「新冷戦」と断じ、欧州での衝突が直ちに核戦争にエスカレートする恐れがあった米ソ冷戦よりも、限定的な戦争に転じやすいと警告。「台湾、南シナ海、東シナ海が発火点になる」と語る。

 特に台湾をめぐっては、米国が「民主主義サミット」招待などで関係を強化しているのに対し、中国は軍用機による防空識別圏進入を繰り返し、緊張が高まる一方だ。オースティン国防長官は先月、「(台湾有事の)リハーサルのように見える」と懸念を表明した。米政権は今後も、日米豪印4カ国(クアッド)を軸にインド太平洋で対中包囲網を展開する意向で、緊張緩和の気配は容易には見えそうにない。