南太平洋の島国・トンガの近海で起こった火山噴火は地球規模の津波を引き起こした。時事ウェッブによると、15日に起きた海底火山の噴火で、「同国や周辺諸国のほか日本や米国など太平洋沿岸の広範な地域に津波が押し寄せた。トンガは通信インフラが遮断され、被害の把握や安否確認が難航。噴火した火山は昨年12月ごろから活動が活発化しており、一部の専門家は『1000年に1度』の大規模噴火との見方を示している」とある。東日本大震災は「100年に一度」の大地震だった。これにも驚いたが、今度は1000年に一度の大噴火だ。太平洋の沿岸国で津波が観測されたのは、噴火に伴う地殻の変動ではない。それもあるだろうが、主因は気圧の変化だという。世界中の観測所で大きな気圧の変化が観測されている。

東北大の今村文彦教授(津波工学)は「気圧の変化をもたらした衝撃波は、海面に短い周期の波を作りながら長い距離を移動してきた。日本付近ではこの波が集積するなどして、大きな津波となったと考えられる」(読売新聞オンライン)としている。巨大噴火による衝撃波が空中を走り、それが海面を押して小さな波を作った。最初は小さい波でも、長距離を移動することで次第に集まり、大きな波のうねりになったということだろう。自然がもたらした巨大な変化だ。大気に囲まれている地球に大きな衝撃が加われば、遠く離れた北米や南米大陸まで変化がおよぶ。1000年に一度の巨大噴火は、人類が太陽の周りを回っている類まれな惑星の住人であることを、改めて思い起こさせてくれた。宇宙の中で起こる自然現象を人類はコントロールできない。自然のメカニズムを知り、自然を恐れることが関の山か。

そんな異常現象に思いを馳せながら、16日朝、NHKテレビを見た。地上波の1、2チャンネル、BSの1、2、3チャンネル、すべてのチャンネルが津波情報一色だった。同じ番組をすべてのチャンネルで放映したということだ。1000年に1度の巨大噴火である。視聴者からの料金で運営している公共放送である。自然災害関連の情報提供の強化は、今年のNHKの重要なテーマの一つでもある。全チャネルで津波情報の警告、警報を流すことに意味がないとは思わない。だが、日本全国の港で観測されたデーターをアナウサーが全て読み上げることに、どれほどの意味があるのだろうか。データを読み上げる以外に、報道内容にも緊迫性はなかった。トンガの近況もなければ、関係者のコメントもない。通信が遮断され情報がわからなかったこともあるだろう。それにしても、地球規模の異常を伝えるNHKの報道ぶりも“異常”だった。