自民、公明両党による夏の参院選での選挙協力を巡り、公明党が「相互推薦」に応じない姿勢を強めている。同党の支持団体・創価学会は候補者支援を「人物本位」で判断するとけん制しており、自民は態度を硬化させる公明・学会側を解きほぐそうと懸命だ。
「自公は連立与党なので、これからも丁寧に議論を重ね、協力を進められるようにしていきたい」。自民党の茂木幹事長は31日の記者会見で、相互推薦の実現に向けて公明の理解を得ていく考えを強調した。
自民側は相互推薦に否定的だった地方組織を説得し終えて一つひとつ手続きを進めているものの、公明側は、幹部が相互推薦に否定的な考えを相次いで示し、にべもない状況だ。石井幹事長は1月28日の記者会見で「自力でしっかり勝てるようにやっていく」と淡々と繰り返した。
公明の態度硬化の背景には、学会による同27日の異例の発表も影響を与えている。発表では、候補者支援は党派を問わず、「人物本位」で判断するとした。1999年の自公連立より前、公明党の一部が新進党に合流した際の94年の方針をわざわざ確認する内容で、公明関係者は「原点に立ち返って、自動的に自民を支援するわけではないということだ」と解説する。
自民側は「これまでも人物本位だったと基本的に理解している」(茂木氏)などと冷静に対応しようとしているが、改選定数1の「1人区」を中心に、「公明・学会の協力がなくなれば候補者が震えるくらい困ってしまう」と危機感が募っている。
自民党の遠藤利明選挙対策委員長は1月下旬までに、神奈川や兵庫など改選定数3~4の複数区の5県から、競合する公明候補を推薦することでそれぞれ理解を得た。31日には5県連の幹部を集めて、改めて推薦に了解を得る予定だったが、延期を決めた。遠藤氏が新型コロナウイルスの濃厚接触者の疑いがあったためだが、「公明・学会側をあまり刺激するのはよくない」との考えもあった模様だ。
一方、学会の「人物本位」の条件は、「候補者個々の政治姿勢、政策、人格」や「学会の理念への理解」も挙げている。自民内では、仮に自公の選挙協力がうまくいかなかったとしても、立候補予定者や県連が公明、学会と良好な関係を築けていれば「地方レベルでの連携はできるのではないか」(自民幹部)と期待する向きもある。