[8日 ロイター] – ロシアのプーチン大統領は隣国ウクライナに軍事侵攻する姿勢を強めながらも、その裏では対立がエスカレートするのを避け、何らかの形で西側諸国との落としどころを探りたがっているようにも見える。

プーチン氏はマクロン仏大統領との会談後に開いた8日未明の会見で、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)に加盟し、クリミア半島の奪回を試みるなら、欧州諸国は自動的にロシアとの「勝者なき」戦争に巻き込まれるだろうと警鐘を鳴らした。こうした発言はこの1週間で2度目となる。

しかし、午前1時過ぎに終わった大統領府でのこの記者会見で、対話は終わっていないとも発言。米国とNATOからの提案の一部は協議に値するものであり、ロシアは「全員に合った妥協策を探すことに」全力を尽くすと述べた。

ロシアがウクライナ国境付近に10万人を超える部隊を展開して3カ月余りになるが、プーチン氏の意図は見通せないままだ。米政府は週末、プーチン氏が数日、あるいは数週間中に攻撃命令を出す可能性があるとの見方を示した。

しかし、ロシア大統領府が出すシグナルの読解を専門とするモスクワ在住のアナリスト2人は、プーチン氏が長時間にわたるマクロン大統領との会談後に行った深夜の発言を聞いて、交渉に臨みたいという真剣な意志が表れていると指摘する。

ロシア国際問題評議会のアンドレイ・コルトゥノフ会長は、「彼が自身の立場に固執しているのはもちろんのことだが、対立を激化させたがっている印象は受けなかった」と説明。「敵に説教だけして門戸を閉ざしたいのなら、敵と7時間も話したりしないだろう」と語った。

プーチン氏はウクライナ国境で部隊を増強しつつ、西側に要求を突きつけている。8日の会見でも繰り返したその主要な要求は、1)NATOをこれ以上拡大しない、2)ロシア国境付近でのミサイル配備を停止する、3)欧州におけるNATOの軍事基盤を1997年の水準に縮小する――の3点だ。

プーチン氏は、米国とNATOが1月26日にロシアに送った回答で、これらの要求に対する答えを避けたと不満を示し、回答には「政治的な決まり文句と、一部の2次的な問題に関する提案」が含まれていたと批判した。

しかし、スペイン紙パイスが先週伝えた米側の回答には、ロシアの具体的な要求に対する提案も盛り込まれていた。その1つは、ウクライナでミサイルと戦闘部隊を展開しないとする相互合意について米国は話し合う用意があるというもの。また、米国がポーランドとルーマニアのミサイル防衛基地に巡航ミサイル「トマホーク」を配備していないことを確認する「透明な仕組み」についても交渉の用意があるとした。

こうしたことからコルトゥノフ氏は、米国との軍備管理対話に入ることはプーチン氏の利益にかなうとみる。「欧州における軍備管理について真剣な交渉が成されるなら、NATOの軍備がロシア国境に近づくことを防ぐことにつながるため、ある意味で彼(プーチン氏)の要求に合致する。彼が最も懸念しているのがその点であるなら、彼はこの方法で問題解決を試みることができる。ただもちろん、主要な要求を完全に取り下げることはなさそうだ」という。

<ミンスク合意>

ロシアの外交専門誌ロシア・イン・グローバル・アフェアーズの編集責任者ヒョードル・ルクヤノフ氏の見立てでは、西側にウクライナのNATO加盟を認めないことを約束させられない場合、ロシアは2014、15年の「ミンスク合意」の復刻版を通じて同様の成果を得ようとする可能性がある。

プーチン氏はマクロン氏との会談後、ミンスク合意に代わるものはないと強調した。同合意は、ロシアを後ろ盾とする分離主義派がウクライナ軍と戦っているウクライナ東部2州に、特別な憲法上の地位を与えるものだ。

特別な地位の定義次第では、ウクライナのNATO加盟を阻止できる可能性がある。とりわけ、2州がロシアと自由に独自の安全保障合意を結べるような地位を得れば、その可能性は高まる。しかし、ウクライナはそうした措置に強く抵抗している。

ルクヤノフ氏は、西側がウクライナに強い圧力をかけない限り、同国が分離主義派との交渉拒否を解除し、東部2州の自治を承認することは難しいとみる。

しかし、何らかの紛争解決策が見つかれば、その中から「新たな合意の輪郭が浮上する」可能性はあるとルクヤノフ氏は予想。その場合、マクロン大統領の提案に沿った欧州の新たな安全保障合意、そして米国が交渉に前向きな軍備管理措置が、併せて発表されるとみている。

「私は楽観的であると同時に、非常に慎重に状況を見ている」とルクヤノフ氏は語った。

(Mark Trevelyan記者)