【ワシントン時事】ウクライナ危機をめぐる米国とロシアの対立は、経済安全保障の観点で重要性が高まるハイテク技術や通貨、エネルギー分野で世界経済の分断を深めかねない情勢だ。民主主義の価値観を共有する先進7カ国(G7)はウクライナに全面侵攻したロシアへの経済制裁で足並みをそろえたが、権威主義のロシアは中国からの支援を後ろ盾に報復措置も辞さない構えだ。

 経済制裁の目玉の一つは、ロシア軍需産業を標的にしたハイテク輸出規制。米国製品だけでなく、米国の装置や技術を使って生産された外国製品の取引も制限する。米欧や日本の協調行動で半導体などの供給網を遮断する狙いだが、巨額の政府補助金をてこに国産半導体の育成を急ぐ中国がロシアに代替品を供給するとの臆測が広がっている。

 G7各国はロシア主要銀行の外貨決済を禁じる金融制裁に踏み切る。米国はロシア最大手ズベルバンクを含む大手金融機関を制裁対象に指定し、基軸通貨ドルの取引を制限。一方、2014年のウクライナ南部クリミア併合後にも米制裁を受けたロシアは外貨準備に占めるドルの比率を引き下げ、中国人民元の国際決済システムにも参加するなど「ドル制裁逃れ」を着々と進めてきた。

 ウクライナ情勢の緊迫化は、天然ガスの調達リスクを一気に高めた。米国はドイツとロシアを結ぶ新たな天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」の運営会社に制裁を科し、エネルギー大国ロシアへの輸入依存から脱却するよう欧州各国に促した。ロシアは欧州向けのガス供給減少を見越し、中国向けを拡大する契約を今月初旬に結んで先手を打った。

 ウクライナにおけるロシアの立場を支持するいかなる国も「汚名を着せられる」。バイデン米大統領は24日、ロシアの軍事行動を「侵攻」と表現することを避けた中国を暗に批判した。対ロ経済制裁の回避を手助けした中国企業には「しかるべき(対抗)措置を講じる」(国務省報道官)方針で、西側諸国と中ロ両国との対立の構図が浮き彫りとなっている。