[東京 4日 ロイター] – ソニーグループとホンダは4日、電気自動車(EV)事業の提携で基本合意したと発表した。2022年中に合弁会社を設立し、25年にEVを投入する。ともにカリスマ的な創業者が戦後まもなくに設立し、比較されることの多い日本を代表するIT企業と自動車メーカーがタッグを組み、EV開発を加速する。

新会社は車両の企画設計、開発、販売などを手掛け、初期モデルのEVはホンダの工場で生産する。ソニーのセンサーや通信、エンターテインメントの技術と、ホンダの車両開発や生産、アフターサービスのノウハウを持ち寄り、デジタル時代に合ったEVの投入を目指す。

かねてからEV事業参入の検討を公言してきたソニーは、ソフトウエアなどサービスプラットフォームを開発し、新会社に提供する。ホンダ以外の自動車メーカーにも販売する。4日午後に東京・品川の本社で会見した吉田憲一郎会長兼社長は、ホンダを相手に選んだ理由について「モビリティーの進化に挑戦したいとの思いを共有できた」と説明した。

同席したホンダの三部敏宏社長はソニーについて、創業者同士の親交が深く、「歴史的に文化的にシンクロするところの多い企業。(ともに)『らしさ』を求められる、世界でも稀有(けう)な企業」と相性の良さを評価。「変化を傍観するのではなく、主体的に変革して新しい時代をリードする存在になりたい」と語った。

きっかけは、将来の移動手段(モビリティ)の在り方を検討するホンダが、異業種との協業が必要と考え、両社の若手同士で勉強会を始めたこと。三部社長は「(異業種の)化学反応、大きな可能性を感じた」と指摘。両首脳が昨年末に会い、検討が加速した。EV市場は米テスラなどの新興企業が存在感を強めているが、両社で「化学反応を起こし、顧客の期待をはるかに超える車で戦っていきたい」と語った。

ホンダは世界で販売する自動車を2040年にすべてEVと燃料電池車にする目標を掲げている。三部社長は「独自の戦略も継続して進める」と説明し、新会社で投入するEVは「ホンダのブランドとは別物」と語った。新会社で開発した技術やサービスは「ホンダのほうに取り込む可能性はある」と述べた。

新会社が株式上場する可能性に関しては、「現段階では上場を否定する考え方はない。必要なら十分に可能性はある」(三部社長)、「上場を含めて柔軟に考えている」(吉田社長)とした。

ソニーは今年1月、本格的にEV市場への参入検討と表明。試作車「VISION(ビジョン)─S」シリーズのセダンとスポーツ多目的車(SUV)を披露していた。

(白木真紀、浦中美穂 編集:久保信博)