【北京時事】中国は5日開幕の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で、2022年国防予算を前年比7.1%増の1兆4504億5000万元(約26兆3000億円)にすると明らかにした。伸び率が7%を超えるのは19年以来で軍拡の勢いが加速。習近平国家主席(中央軍事委員会主席)が進める強国・強軍路線の継続が明確に示された形だ。李克強首相は政府活動報告で「習近平強軍思想を深く貫徹し、新時代の軍事戦略方針を貫く」と訴えた。
中国の国防予算は日本の22年度防衛予算案(5兆4005億円)の約5倍に当たる。増加額は約947億元(約1兆7000億円)で、台湾の22年防衛予算案に匹敵する額だ。しかも、具体的な使途が不明で、実際はもっと多いとみられている。
海洋権益の拡大を重視する習氏は海軍の増強に力を入れており、昨年は強襲揚陸艦「075型」、最新鋭駆逐艦「055型」のような大型艦を相次ぎ就役させた。政府活動報告は「訓練を深化させ、国家主権・安全・発展の利益を守り抜く」と強調。台湾海峡や南シナ海での軍事的緊張の高まりに加え、軍と連携を強める海警局による沖縄県・尖閣諸島周辺での活動も続きそうだ。
今年は3隻目の空母が「遅くとも海軍創設記念日(4月23日)までに進水する」(中国の軍事専門誌)という予想が出ている。3隻目の空母は、艦載機を効率的に射出する最新装置、電磁カタパルトが搭載される見通しだ。軍事力を象徴する空母の進水は、今秋の共産党大会で3期目入りが確実視される習氏にとって、「大きな実績」となる。
一方、急速な軍拡を支えてきた中国経済の展望は不透明感を増している。新型コロナウイルスを徹底的に封じ込める「ゼロコロナ」政策は経済の足を引っ張る恐れがある。ロシアのウクライナ侵攻は世界経済全体に大きな打撃を与えかねない。
政府活動報告では「武器装備現代化」や「国防科学技術イノベーションの強化」を推し進めると表明した。ただ、中国は米国などを模倣して軍事技術を発達させてきたが、限界も指摘されている。米シンクタンク「ランド研究所」は2月に公表した報告書で、中国の防衛産業について、企業や研究機関の連携が取れておらず、先端技術も外国に頼っていると分析。指導部の方針と異なることを恐れ、民間企業の創意による技術革新が進まないという見方を示した。