[ワシントン 15日 ロイター] – 米労働省が15日に発表した2月の卸売物価指数(PPI、最終需要向け財・サービス)は前月比0.8%上昇した。前年同月比でも10.0%上昇した。ガソリン価格などの高騰に押し上げられた。

前月比の伸びは1月の1.2%上昇から幾分鈍化したものの、ロシアのウクライナ侵攻を背景に原油や他の商品価格が上昇する中、インフレは今後数カ月高止まりする見通しだ。

ロイターがまとめたエコノミスト予想では、前月比0.9%上昇、前年同期比10%上昇だった。

モノは前月比2.4%上昇と、前月の1.5%上昇から加速し、2009年12月以来の大幅な伸びを記録。ガソリンは14.8%急伸し、モノ全体の上昇分の約40%を占めた。食品は1.9%上昇した。

サービスは前月比変わらず。1月は1%上昇していた。運輸・倉庫サービスが1.9%上昇したものの、ポートフォリオ管理費の4.2%値下がりや、ホテルなどの宿泊費、衣料品、宝飾品などの価格下落によって相殺された。

変動が大きい食品とエネルギー、貿易サービス部門を除いたコア指数は前月比0.2%上昇。前年同月比は6.6%上昇。1月は前月より0.8%上がり、前年同月比6.8%上昇していた。

今回の統計には、2月24日に始まったウクライナ侵攻後の原油・商品価格の急騰の影響は反映されていない。

FHNフィナンシャルのシニアエコノミスト、ウィル・コンパーノール氏は「商品価格の上昇や世界の貿易の混乱が増幅する中、PPIは3月に大幅に上昇すると予想する」とし、「消費者物価の伸びが鈍化するためには、企業が目先、ロシアのウクライナ侵攻や中国での新たなロックダウン(都市封鎖)による影響に対応する必要がある」と述べた。

インフレ率は、いずれの物価指標も米連邦準備理事会(FRB)が目指す2%を大幅に超えている。FRBが16日に利上げ開始を発表すると予想されており、エコノミストは年内に最大で7回の利上げを予想している。

原油価格は30%を超えて上昇し、世界的な指標である北海ブレントは2008年以来の高値となる1バレル=139ドルを付けた。15日には一時1バレル=100ドルを下回る水準まで下落したが、インフレは高止まりするとみられる。米国の工場の主要な原材料供給源である中国での新型コロナウイルスの感染の再拡大がサプライチェーン(供給網)にさらなる圧力をかけているためだ。

FHNフィナンシャルのチーフエコノミスト、クリス・ロー氏は「米国のインフレは今年前半に加速し、第4・四半期はそうならなかったとしても、第3・四半期はほぼ間違いなくさらに上昇するだろう」との見方を示した。

インフレは、ロシアとウクライナの戦争が起こる前から既に問題になっていた。新型コロナのパンデミック(世界的大流行)によって支出がサービスからモノにシフトし、政府からの数兆ドルもの支援策によって強い需要が生まれたが、供給は制約された。新型コロナのまん延で何百万人もの労働者が労働市場を離れ、原材料を工場に、完成品を消費者に届けることが困難となったためだ。

政府は先週、2月の消費者物価指数の前年同月と比べた上昇率が1982年1月以来、約40年ぶりの大きさになったと発表した。

ガソリン価格上昇を中心とする高いインフレ率により、エコノミストは今年の経済成長率の予想を引き下げている。今のところパンデミックの間に家計に蓄えられた多額の貯蓄の効果により、景気後退(リセッション)が起こることは予想されていない。