【ニューヨーク時事】国連安全保障理事会は25日、北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を受けて緊急の公開会合を開いた。米国が制裁強化に向けて新たな決議案を提出する意向を示したのに対し、中国は「緊張を高める行動を取ってはならない」と主張。安保理はこの日、非難声明も出せず、ロシアによるウクライナ侵攻に続き北朝鮮対応でも機能不全を露呈した。
弾道ミサイル発射は、安保理の一連の対北朝鮮決議で禁じられている。2017年に北朝鮮がICBM「火星14」「火星15」を発射した際には、安保理はいずれも全会一致で追加制裁決議を採択した。
だが今回は、中ロのかたくなさが際立つ。北朝鮮が核実験などの新たな挑発に踏み込んでも、常任理事国である中ロが拒否権を盾に意思決定を阻止すれば、ウクライナ侵攻で高まりつつある安保理の在り方に疑義を呈する声が一段と強まりかねない。
トーマスグリーンフィールド米国連大使は会合で、「繰り返される決議違反に何もしないで立ち尽くすわけにはいかない」と強調。「今は制裁を終わらせる時ではなく、強化する時だ」と述べ、安保理が一致して対応する必要性を訴えた。
北朝鮮が今回発射した「火星17」は、米全土を射程に収めるとされる。「ほぼ全ての国連加盟国を脅かす恐れがある」(トーマスグリーンフィールド氏)もので、他の理事国からも非難や懸念の声が相次いだ。最近では非公開で北朝鮮のミサイル問題を協議してきた安保理が、2年3カ月ぶりに公開の会合を開いた背景には、各国の懸念の高まりがある。
しかし中国は「早期の対話再開に道を開くため、(米国は)魅力的な提案をしなくてはならない」と主張。「当事者間の信頼を強める雰囲気を醸成する」として、逆に制裁の緩和を求めた。ウクライナ侵攻で孤立するロシアも中国に同調し、制裁強化ではなく緩和の重要性を強調した。
利害関係国として会合に参加した日本の石兼公博国連大使は「世界がウクライナの平和を取り戻すために奮闘する中、北朝鮮がこの状況を利用して禁じられた能力の開発にまい進するのを許してはならない」と呼び掛けた。会合後には「安保理の制裁決議を何一つ守っていない北朝鮮に、なぜわれわれがこの時点で緩和を考えなくてはならないのか」と中ロの主張への憤りを口にした。
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