為替市場でドル高・円安が急速に進んでいることを受けて、経済界からは懸念の声が相次いでいる。

  経済同友会の桜田謙悟代表幹事(SOMPOホールディングス社長)は29日の記者会見で、円安が加速していることに対して現在の為替水準が適切だとはとても思えないとの見方を示した。企業によって受け止めは異なるものの、全体として行きすぎとの評価になっていると述べた。

桜田氏(2020年1月)Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  日本鉄鋼連盟の橋本英二会長(日本製鉄社長)も29日、鉄鋼業界など製造業は通常、ドルベースでのコスト競争力につながることから円安の恩恵を受けるものの「今回はまったく様相が違う」と指摘。「円安のリスクというのはこれが初めて」の認識を示した。

  現在の為替水準は「日本が一人負けしていることの象徴」とし、「大変大きな問題」だと話した。外貨建てで支払う海外からの資源やエネルギーの輸入コストが「従前とは比較にならないくらい」高騰しており収益に打撃になっていると述べた。

  九州電力の池辺和弘社長も、同社が火力発電所で使う液化天然ガス(LNG)など燃料の価格が高騰する中、円安により調達コストがさらに上昇するとして「非常に心配している」と語った。ただ、燃料価格の上昇分は数カ月後の電気料金に反映される仕組みがあるため、現在の為替は対応可能な水準だという。

  日本郵船の長沢仁志社長は、外航海運ではドル建てで運賃を受け取ることが多く、同社の経営には「円安はどちらかと言えば追い風」と指摘。しかし、円安による燃料高や原料高の影響で経済が悪化する恐れがあり、「心配している」と述べた。