4月1日から新年度ですが、暮らしに身近なものの値上げは続きます。コロナ禍で落ち込んだ経済活動の正常化などを背景に原材料価格が高騰する中、メーカーの間では4月以降、食料品や日用品の価格を引き上げる動きが相次いでいて、家計の負担が一段と増えることも予想されます。

また、新年度の4月1日から、年金や医療、それに働き方の制度などが変わります。

さまざまな値上げの動きや制度の変更点などをまとめました。

食用油

このうち食用油は、原料となる大豆や菜種の国際的な取り引き価格が上昇していることなどを受けて、食用油大手の日清オイリオグループとJ‐オイルミルズが4月1日の納品分からいずれも家庭用と業務用で1キロ当たりの価格を40円以上値上げします。

ケチャップなど

また、食品大手のカゴメはトマトの輸入価格の上昇を受けて、主力のトマトケチャップや、トマトピューレなど家庭用と業務用の合わせて125品目について4月1日の納品分から出荷価格をおよそ3%から9%引き上げます。

トマトケチャップの値上げは7年ぶりです。

チーズ

世界的な需要の拡大を受けチーズも値上がりします。

乳業大手3社は、4月1日の出荷分から家庭用のチーズの希望小売価格を引き上げます。

▽明治が20品目について5.4%から6.7%

▽雪印メグミルクが、35品目を4.3%から10%

▽森永乳業が24品目を5.3%から10.5%、

それぞれ値上げします。

飲料水・レトルトカレー

このほか大塚食品は、原材料価格や物流費の高騰を理由に4月1日の納品分から飲料水とレトルトカレーの商品の一部を値上げします。

菓子

さらに「うまい棒」の名称で40年以上にわたり販売価格が据え置かれてきたスナック菓子が、4月1日の出荷分以降、これまでの10円から2円、値上げされます。

原料のコーンや油などの仕入れ価格が上昇したためだとしています。

コーヒー

外食業界でもコーヒーチェーン大手のスターバックスが4月13日からコーヒーなどの主力商品の価格を、およそ10円から55円引き上げます。

日用品(紙製品・おむつ)

一方、日用品でも値上げの動きが広がっています。

このうち家庭向けの紙製品では
日本製紙クレシアが、4月1日の出荷分から▽ティッシュペーパーや▽トイレットペーパー、それに▽ペーパータオルなどを10%以上、値上げします。

大王製紙も、すでに3月22日の出荷分から、15%以上値上げしていて、両社は、燃料価格の高騰や物流コストの上昇が主な要因だとしています。

また日用品大手の花王は、乳幼児向け紙おむつの主力製品の一部について、原材料価格の高騰を理由に4月1日の出荷分からおよそ10%値上げします。

タイヤ

原材料価格の上昇でタイヤも値上げが相次ぎ、
最大手のブリヂストンは、4月1日から乗用車用や二輪車用で販売店などへの出荷価格を7%引き上げるほか、横浜ゴムは4月以降、最大で9%値上げします。

またトーヨータイヤと住友ゴム工業はすでに3月までに値上げをしています。

小麦値上げで小麦粉やパンの値上げ懸念

さらに、今後についても、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻による影響などから引き続き値上げの動きが広がるとの見方が出ています。

政府は、輸入した小麦を製粉会社などに売り渡す価格を4月から17%余り引き上げます。

主な産地である北米の不作に加え、ウクライナ情勢の緊迫化で国際価格が一段と上昇したことが要因です。

製粉会社が実際に小麦粉の価格を改定するのは過去の例でおよそ3か月後とされていて、小麦粉を使うパンなどのさらなる値上がりも予想されます。

このほかにも、原油価格の高騰や物流コストの上昇などを受けて、一部の食品メーカーが5月にチョコレートやグミなどの菓子を値上げするほか、6月には一部のソースや、即席麺を値上げすることをすでに決めていて、新年度も、暮らしに身近なさまざまなものの値上げが、家計を一段と圧迫することになりそうです。

JR東日本 新幹線や特急で「最繁忙期」料金を設定

JR東日本の新幹線や特急列車で、4月1日から「最繁忙期」の料金が新たに設けられるほか、JR九州の特急料金がおよそ4割、値上げされます。

JR東日本は、新幹線や特急などの指定席料金について、これまで通常期、繁忙期、閑散期の3段階で料金設定していましたが4月1日から新たに「最繁忙期」の料金を加えました。

「最繁忙期」は、年末年始や春の大型連休、お盆期間が対象で
▽JR東日本の東北、山形、秋田、上越、北陸の各新幹線と一部の特急のほか
▽JR北海道の北海道新幹線と
▽JR西日本の北陸新幹線も含まれます。

通常期と比べ、繁忙期は200円の増額、閑散期は200円の減額で料金差は最大400円でしたが、「最繁忙期」では400円の増額となり最も安い閑散期との差額は600円に広がります。

一方、JR九州は在来線の特急料金を4月1日から平均でおよそ4割、値上げしました。

自由席の特急料金で、すべての区間が対象となります。

例えば、普通運賃を含めた自由席の特急料金は
▽博多・長崎間は4270円から5060円へと790円高くなるほか
▽大分・宮崎間は5590円から6470円へと880円値上がりします。

JR九州が特急料金の値上げに踏み切るのは消費増税に伴うものを除けば、35年前の民営化以降で初めてです。

首都高は新料金体系 上限額の引き上げ 深夜は割引も

新年度の4月1日から首都高速道路では新たな料金体系が導入されます。

上限額がこれまでの1.5倍の1950円に引き上げられるなど、値上げとなるケースもあります。

首都高速道路では現在、走行距離に応じた料金を設定し、車種ごとに上限を定めています。

ただ、現行の料金体系では長距離を走るほど割安となるため、東京外かく環状道路や圏央道などを避け首都高速道路を経由して目的地へ向かう車が多く、都心部の渋滞につながっているということです。

このため首都高速道路は国土交通省の作業部会の答申をふまえ、4月1日からETCをつけた普通車の場合、料金の上限額を現在の1320円から1950円に引き上げます。

新たな料金体系では走行距離が35.7キロを超えると従来よりも料金が上がり、55キロを超えると上限額が適用されます。

一方、混雑している昼間から交通量の少ない深夜に利用を促すため、ETC車を対象に深夜割引も導入されます。

具体的には、深夜0時から4時の間に首都高速の入り口を通過した場合、料金を20%割引するとしています。

このほかトラックやタクシーなど長距離を利用する事業者に対しては、割引き率を拡大するとしています。

首都高速道路は「渋滞緩和に向けご理解いただきたい。あらかじめホームページなどで料金を確認してほしい」としています。

再エネに新制度 家計の負担軽減へ

太陽光など再生可能エネルギーを普及させるために家庭などが支払っている上乗せの負担額を抑えるため、政府は4月1日から新たな制度を始めます。

FIPと呼ばれる制度で、大規模な発電事業者には市場原理を導入し、国民の負担を抑えるねらいです。
再生可能エネルギーで発電した電力は固定価格買い取り制度=FITと呼ばれるしくみで、大手電力会社が一定の価格で買い取ることを義務づけられています。

しかし、買い取りにかかる費用は電気料金に上乗せする形で家庭や企業が負担していてその額は10年間で15倍余りに増加し、課題となっていました。
このため、経済産業省はあすの新年度からFIPという新たな制度を導入します。

対象となるのはこれから新たに整備される、太陽光ではメガソーラーと呼ばれる、1000キロワット以上の大規模な発電施設です。
こうした施設にはFITのような固定価格による買い取りは行われなくなります。

発電事業者には市場原理が導入され、みずから電力の売り先を確保することが求められます。
一方、電力市場の価格変動に応じて一定の補助金が国から支給され、事業者の経営が悪化しないよう配慮されています。

経済産業省では国民負担の重い今の仕組みを将来的に縮小していき、自由競争によって再生可能エネルギーの導入拡大をはかっていく考えです。

年金支給額と保険料

公的年金の支給額は、現役世代の賃金水準が下がったことから、前年度より0.4%引き下げられます。

引き下げは2年連続です。

1か月当たりの支給額は

▽自営業者らが受け取る国民年金で、6万4816円と、前の年度から259円減るほか、

▽厚生年金では、平均的な収入があった夫婦2人の世帯で、21万9593円と、903円減ります。

一方、国民年金の保険料は、前の年度から20円減って、月額1万6590円になります。

年金受給開始年齢、75歳まで繰り下げ可能に

60歳から70歳の間で自由に選ぶことができた公的年金の受給開始年齢が、高齢者の就業機会の拡大に伴い、75歳まで繰り下げられるようになります。

年金の支給額は、原則の65歳より遅らせて受け取る場合、1か月繰り下げるごとに0.7%ずつ増えます。

75歳から受け取り始めれば、65歳から受け取る場合と比べ、84%増えることになります。

一方、65歳より早めて受け取る場合、1か月繰り上げるごとに0.5%ずつ減っていましたが、0.4%ずつに減少幅が縮小されます。

60歳から受け取り始めれば、65歳から受け取る場合と比べ、24%減ることになります。

在職老齢年金 減りにくく

60歳以降、働きながら受け取ることができる「在職老齢年金」には、一定の収入があれば年金を減らす制度がありますが、高齢者の就労意欲を削いでいるという指摘を受けて、制度が改正されました。

60歳から64歳までは、年金が減らされる収入の基準額が、これまでは月額28万円でしたが、47万円に引き上げられます。

例えば、1か月に年金が10万円、賃金が26万円の合わせて36万円の収入が見込まれる場合、これまでは年金が4万円減らされていましたが、今後は年金10万円を全額受け取ることができます。

「年金手帳」廃止

公的年金の加入者に交付されている「年金手帳」が廃止されます。

初めて年金に加入する場合などには新たに「基礎年金番号通知書」が届けられるようになります。

年金に関する情報はすでに電子データとして管理されるようになっていて、各種の届け出や申請もマイナンバーを使ってできるようになったためです。

今の「年金手帳」は、基礎年金番号を確認する書類として使えることから、日本年金機構は引き続き、保管するよう呼びかけています。

不妊治療の保険適用拡大

不妊治療に対する公的保険の適用範囲が拡大されます。

▽精子を妊娠しやすい時期に子宮内に注入する「人工授精」

▽精子と卵子を採取し受精させる「体外受精」

それに
▽注射針などを使って卵子に精子を注入する「顕微授精」

などが新たに適用対象になりました。

このうち「体外受精」や「顕微授精」などは、治療を始める時点で女性の年齢が43歳未満であることが条件で、

女性の年齢が

◇40歳未満の場合は子ども1人につき最大6回まで

◇40歳以上43歳未満の場合は最大3回まで

保険が適用されます。

回数制限にあたっては、従来の助成金制度を使った治療など、過去の治療実績は含みません。

また従来の助成金制度は終了するものの、すでに始まっている治療は1回に限って助成金の対象とする経過措置が設けられています。

オンライン診療の恒久化

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、特例的に認められてきた初診からのオンライン診療が「かかりつけ医」が行うことを基本に、対面診療と組み合わせることを前提として恒久化されます。

男性の育児休業

男性が育児休業をとりやすくするための新しい制度が始まります。

企業には、育休を取得しやすい環境の整備に加え、妊娠や出産の報告を受けた場合は、個別に制度を周知したうえで取得するかどうか意向を確認し、育休中に受け取れる国の給付金についても説明することなどが義務づけられます。

また、これまでは有期雇用の労働者で雇用されている期間が1年を下回る人は育休の対象外でしたが、子どもが1歳半になるまでに契約が終了することを事業主が明確にしていない場合は育休を取得できるようになります。