テスラのCEOであるイーロン・マスク氏のツイッター買収が決まった。ツイッター経営陣がマスク氏の提案を受け入れた。これでツイッターはマスク氏の手に渡る。ブルームバーグによると買収総額は440億ドル(約5兆6400億円)。安い買い物ではない。ツイッターには「無限の可能性」があるとみるマスク氏。世の中の規制や束縛から同社を解き放ち、「表現の自由」を体現するメディアに変革すると大言壮語した。18日付の当欄で「言論にとって自由は絶対に守るべき『聖域』だ。だがそれは言うほど簡単ではない。ツイッターはいまや社会的公共財だ。マスク氏は本気なのか。金持ちの戯れとしか思えない」と批判的な感想を書いた。有言実行。マスク氏の金力と実行力には脱帽しかない。表現の自由はこれからじっくり見守るとして、「金持ちの戯れ」と茶化したお詫びに、マスク氏のウクライナ貢献を己の頭に刻むことにする。
マスク氏が創業したのはテスラだけではない。スペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ、略称スペースXもその一つ。この会社は宇宙船を製造すると同時に宇宙輸送サービスまで手がける企業だ。それだけではない。宇宙空間の通信事業も手がけている。同社が提供する通信インフラが「スターリンク」だ。低軌道に大量の通信衛星を打ち上げ、地球上のどこからでも通信が可能になるようにしている。マスク氏はこのスターリンクを、ウクライナに解放したのだ。ABEMA TIMES(4月5日付)によると、ウクライナのフェドロフ副首相兼IT大臣が「ステーションを提供してください」とツイートしてからわずか10時間後のことだったという。開戦から数日後のことだ。そしてこの副首相は「31歳で、オンライン広告会社の起業を経て、最年少の大臣として19年発足のゼレンスキー政権に入閣した」(日経新聞)という。コロナで一躍名をあげた台湾のオードリー・タン氏を上回る若さだ。
決断の速さは類を見ない。21世紀の戦争では通信の確保が勝敗を左右する。先手を打ったウクライナはロシアの猛烈なミサイル攻撃をかいくぐって、ドローンを操作しながらロアシアに対抗している。ゼレンスキー大統領が世界中の国会議員にオンラインでロシアの残虐さを訴えられるのも通信回線を確保しているからだ。もちろんスーリンクだけではない。地上の通信回線が破壊されるたびに、ウクライナの保守要員が復旧に努めいている。通信という点でウクライナはロシアを上回っている。マスク氏の貢献も賞賛に値する。総力戦でロシアを凌駕しているのだ。日本のように稟議を回していたらこうはいかないだろう。マスク氏は回線の上を走り回るアプリを手に入れた。ツイッターから排除されたトランプ氏は新しいSNSである「トゥルース・ソーシャル」を作った。どちらも狙いは「表現の自由」だ。
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