【ソウル=溝田拓士】北朝鮮国営の朝鮮中央通信は12日、国内で初めて新型コロナウイルス感染者が確認されたと報じた。 金正恩キムジョンウン 朝鮮労働党総書記は12日の党政治局会議で「最大非常防疫体系」への移行を宣言した。

北朝鮮全土で1万8千人の発熱者、6人死亡と北が報道…「オミクロン株」検出の死者も

 同通信によると、8日に 平壌ピョンヤン で発熱者から採取した検体から変異株「オミクロン株」が確認された。12日の会議では全国の市、郡の封鎖も指示された。感染の規模や経路は報じられていない。

 世界的にコロナ感染が拡大する中、正恩氏のマスク姿は報じられたことがなかったが、12日の朝鮮中央テレビの会議映像では、幹部だけでなく、正恩氏も着席と退席の際に着用していた。

 北朝鮮では医薬品、医師、病床が圧倒的に不足している。韓国政府関係者によると、「死者が増加し、葬儀もままならない状況」という。今回発表に踏み切った理由について、この関係者は「隠しきれないほど拡大して民心が乱れたため、非常事態の宣言で統制する必要があった」と分析した。

 北朝鮮が今後、ワクチンを共同購入・分配する国際的枠組み「COVAX(コバックス)」や赤十字に支援を要請する可能性もある。ただ北朝鮮では、ワクチンを低温で輸送・管理する「コールドチェーン」の整備などに課題があり、ワクチンが入手できたとしても、国内各地に供給できない可能性がある。

 平壌では4月15日に正恩氏の祖父、 金日成キムイルソン 主席の誕生110年を祝う市民パレード、25日には朝鮮人民革命軍創建90年を記念する軍事パレードが行われた。動員された数万人の大群衆はほとんどマスクをしておらず、一連の行事で感染が拡大した可能性もある。