【イスタンブール、ロンドン時事】ウクライナのゼレンスキー大統領は21日に報じられたテレビインタビューで、ロシア軍がウクライナへの本格侵攻を開始した2月24日以前の領土を取り戻すことができれば「ウクライナにとっての勝利と見なす」と表明した。現地メディアが伝えた。

 ロシアが2014年に一方的に併合した南部クリミア半島などをめぐっては、必ずしも奪還を目指さないことを示唆した形だ。ゼレンスキー氏は「戦争は外交を通じて終結することになる」とも語った。

 一方、ポドリャク大統領府顧問は21日、ロイター通信に「ロシア軍はこの国から去らなければならない。和平プロセスが再び可能になるのはその後だ」と言明。ロシア軍の全面撤退が先決であり、それまで停戦や和平交渉に応じないとする厳しい姿勢を示した。

 ポドリャク氏は停戦合意で一定期間戦闘がやんでも「ロシアは武器と人員を増強し、(戦い方の)ミスを修正するなどし、しばらく後に一段と血に染まった大規模な攻撃を始めるだろう」と強い不信感を示した。

 ウクライナ指導部や軍では、高い士気と米欧からの高性能兵器の供与を背景に、クリミア半島を含む「失ったすべての領土を回復する」(国防情報局トップのブダノフ氏)と、反転攻勢による勝利に自信をつけ始めている。

 これに対しゼレンスキー氏はインタビューで「この戦争の代償、(奪われた土地の)支配奪還に払う犠牲を考えなければならない」と述べ、交渉を排して徹底抗戦を続けることに慎重な見方を示した。