ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。
ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交などウクライナ情勢をめぐる25日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)
ロシア軍 ウクライナ東部の完全掌握目指し攻勢強める
ロシア国防省は25日、南東部ザポリージャ州にある戦闘機のエンジンの工場をミサイルで破壊したほか、東部ドニプロペトロウシク州の鉄道駅周辺で移動中のウクライナ側の部隊を攻撃したなどと発表しました。ロシア軍は東部のドネツク州とルハンシク州の完全掌握を目指し、このうちルハンシク州でウクライナ側が拠点とする都市、セベロドネツクへの攻勢を強めています。
アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は24日「ロシア軍は東部で大規模にウクライナ軍を包囲することはあきらめた。その代わりに小規模な包囲を確保しセベロドネツクに集中しているようだ」と分析し、ロシア軍の戦術面での変更を指摘しています。
ロシア国営テレビ アゾフスターリ製鉄所内部の映像公開
ロシアの国営テレビはウクライナ東部のマリウポリで制圧したアゾフスターリ製鉄所の内部の映像を24日に伝えました。映像では壁の一部が崩れ落ちた通路や、あちこちに放置されたペットボトルや食器、また荷物が散らかったままの部屋などが確認できます。
通路にはところどころに薬きょうが置かれ、ロシア側の兵士は「ウクライナ側の兵士が製鉄所の内部で道に迷わないよう目印として置いていた」と説明しています。
製鉄所の敷地内には屋根や壁が大きく崩れ落ちほとんど骨組みだけになった建物もあり、陥没した地面や破壊された車などから戦闘の激しさがうかがえます。
ウクライナ国防省「ロシアの軍事作戦 最も活発な段階」
ウクライナ国防省のモツヤニク報道官は24日「ロシアの軍事作戦が最も活発な段階に入った」と述べ、ロシア軍の攻撃が激化していることを明らかにしました。そのうえで「東部戦線は非常に困難な状況だ。ウクライナの運命がまさに今、決まろうとしている」と危機感を示しました。
ウクライナ軍によりますと24日、東部のドネツク州とルハンシク州ではロシア軍の攻撃によって少なくとも市民14人が死亡し、15人がけがをしたということです。
ロシア国防相「目標を達成するまで作戦を継続」
ロシア国防省は24日、ウクライナ東部ドネツク州の各地をミサイルで攻撃し、弾薬庫を破壊したなどと発表しました。またドネツク州の要衝マリウポリについては「ロシアの黒海艦隊が港に設置されていた機雷の撤去を完了した」と明らかにしました。ロシア軍はドネツク州に隣接する東部ルハンシク州でもウクライナ側が拠点とするセベロドネツクへの攻勢を強めていて、イギリス国防省は「ロシアがセベロドネツクの一帯を占領すれば、ルハンシク州全体が掌握されることになる」と指摘しています。
こうした中、ロシアのショイグ国防相は24日「欧米はウクライナに大規模な支援を行いロシアに制裁の圧力をかけているが、目標を達成するまで特別軍事作戦を継続する」と強調しました。またプーチン大統領の最側近の1人、パトルシェフ安全保障会議書記も「われわれは期限を定めていない。大統領が設定した目標はすべて達成される」と述べていて、侵攻開始から3か月がたち、ロシアは作戦目標を達成するまで長期戦もいとわない姿勢を示しています。
ゼレンスキー大統領「領土を戻し交渉のテーブルに」
ウクライナのゼレンスキー大統領は24日、NHKのインタビューに応じました。日本メディアのインタビューに応じるのはことし2月24日のロシアによる軍事侵攻以降はじめてです。
この中でゼレンスキー大統領は、3か月前にロシアがウクライナに軍事侵攻を開始したことについて「ウクライナは3日もすればロシアに占領されてしまうと考えている国もあったが、3日がすぎ、3週間がすぎ、もう3か月が経過した。私はロシアの試みが成功するとは考えていなかった」と述べ、ウクライナ軍は欧米の軍事支援を受けてロシア軍と戦うことができているとして国を守る戦いを続ける決意を示しました。ロシア軍の劣勢も伝えられる中、ウクライナ軍の今後の戦略については「反撃の準備ができるのは長距離ミサイルなど必要とする兵器が届いた時だ」と述べ、欧米の軍事支援によって態勢が整ったのちに反撃を強める姿勢を強調しました。
そのうえでゼレンスキー大統領は「すべてのウクライナ人にとって勝利とは領土を取り戻すことだ。ドンバス地域とクリミア半島の両方でわれわれのすべての領土を取り戻さなければならないのは確かだ。しかしそれは犠牲を伴うだろう。まずは2月24日以前の状態に戻したいと考えている。それから交渉のテーブルにつくつもりだ」と述べ、ロシア軍が侵攻する以前の状態にまで領土を奪還しないかぎり停戦交渉は難しいという考えを示しました。
米財務省 ロシア国債特例延長せず デフォルトの可能性強まる
アメリカ政府はウクライナに侵攻するロシアへの制裁としてドル建てのロシア国債の取り引きを禁止していますが、国債を保有するアメリカの投資家への影響などを考慮して5月25日まで一時的にロシアからの利払いや償還金などの受け取りを認める特例を出していました。
これについてアメリカ財務省は24日、特例を延長せず25日に終了すると正式に発表しました。この結果、今後ロシアはアメリカの投資家に対して支払いをすることが難しくなるため、ロシア国債がデフォルト=債務不履行に陥ったと認定される可能性が強まりそうです。
ウクライナ 少なくとも市民3942人が死亡 うち258人は子ども 国連
国連人権高等弁務官事務所は、ロシアによる軍事侵攻が始まったことし2月24日から5月23日までにウクライナで少なくとも3942人の市民が死亡したと発表しました。このうち258人は子どもだとしています。
地域別では
▽東部のドネツク州とルハンシク州で2209人
▽キーウ州や東部のハルキウ州などそのほかの地域で1733人の死亡が確認されているということです。
またけがをした市民は4591人に上るとしています。
ただ国連人権高等弁務官事務所は、激しい戦闘が続いた東部のマリウポリなどでの死傷者についてはまだ確認が取れていないなどとして、実際の死傷者の数はこれを大きく上回るという見方を示しています。