奈良市で8日に起きた安倍晋三・元首相に対する銃撃事件で、最初の発砲後、近くにいた警察官4人のうち3人は動き出しが遅れていたことが捜査関係者への取材でわかった。警視庁の警護員(SP)は防弾仕様のカバンを掲げたが、安倍氏との間に距離があったため間に合わなかった。警察庁は14日、警護・警備の問題点を調べる検証チームを現地に派遣し、本格的な調査を始めた。

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 事件発生から15日で1週間となる。検証チームは今後、約1週間かけて現地で警護員から聞き取りを行うなどした上で、要人警護の抜本的な見直しに向けた議論を進める方針だ。

 安倍氏は8日午前11時半頃、奈良市の近鉄大和西大寺駅前で参院選の応援演説中に、無職山上徹也容疑者(41)に背後から2度にわたって銃撃され、搬送先の病院で死亡した。

 捜査関係者によると、当時、安倍氏の直近には陣営関係者らがおり、その周りに警視庁のSP1人と奈良県警の警護員3人の計4人が配置されていた。

 最初の発砲時、4人は前方などを見ており、山上容疑者に気づいていなかった。次の発砲までに約2・7秒あり、この間、SPは銃を構える山上容疑者に気づき、防弾仕様のカバンを掲げて山上容疑者と安倍氏の間に割り込もうとしたが、間に合わなかった。

 警護対象の最も近くにいるSPは本来、異常時には警護対象者に覆いかぶさったり、身を伏せさせたりする必要がある。だが、SPは安倍氏と2~3メートル離れていたことから、とっさにカバンを用いて弾を防ごうとしたとみられる。

一方、県警の3人は最初の発砲後、ほとんど動けず、2度目の発砲後に2人は山上容疑者に突進し、1人はSPと共に安倍氏に駆け寄っていた。警察庁が今後進める検証では、4人の役割分担や、それぞれの立ち位置が決まった経緯などについて確認する。

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 地方警察の警護員は、事前に警視庁に派遣されて研修を受けている。だが、経験豊富なSPとは能力差が生じやすい。警察庁は8月中に検証結果をまとめる予定で、同庁幹部は「警察全体の警護レベルの底上げや、警視庁SPの運用拡大が課題となる」と話した。