[東京 16日 ロイター] – 日本政府は極東ロシアの石油・天然ガス開発事業「サハリン2」の権益維持に向け、実際に出資する商社を支援する方針を固めた。現在の事業を自国企業に移管する方針を示したロシアからの条件提示を待ち、三井物産、三菱商事と本格的な調整に入る。事情を知る関係者3人が明らかにした。日本政府は極東ロシアの石油・天然ガス開発事業「サハリン2」の権益維持に向け、実際に出資する商社を支援

ロシアのプーチン大統領は先月末、サハリン2の事業を新会社に移す大統領令に署名。日本の商社などが権益を維持するには改めてロシアに申請して認められる必要があり、ウクライナ情勢を巡って主要7カ国(G7)と足並みを揃える日本政府の対応が注目されていた。

事情を知る政府関係者らによると、このほど権益維持を目指す方針を固めた。経産省関係者はロイターの取材に「商社が権益維持で動けるようにサポートする方向性を決めた」と説明。「商社にはこれから伝える」とした。

岸田文雄首相は14日の記者会見で、「日本の権益を守り、LNG(液化天然ガス)の安定供給確保ため官民一体で対応したい」と述べていた。

ロイターは経産省にコメントを求めたが、現時点で回答を得られていない。三菱商事は「政府・パートナーと連携の上で協議していく」、三井物産は「今後については政府、パートナー含むステークホルダーと協議中」とコメントした。

サハリン2は三井物産が12.5%、三菱商事が10%を出資。日本のLNG輸入量の約9%を占める。市場で調達するよりも安価なため、仮に権益をあきらめれば調達価格が上昇する可能性がある。資源エネルギー庁の幹部は、「代替LNGを市場で調達すると数兆円の追加負担が発生する」と説明する。

ロシアは新会社への出資条件など詳細を発表しておらず、日本政府はロシアからの情報を待って商社と本格的な調整に入る。資源エネルギー庁の同幹部は「新会社に関する詳細は問い合わせ中」と説明。G7は4月の首脳会談で対ロ制裁の一環としてエネルギーを含むロシア経済の主要部門への新規投資禁止を決めているが、「既存権益への投資という理解だ」と話す。

27.5%の権益を保有する英シェルは2月に撤退を発表したが、まだ売却先は決まっていない。

日本政府はロシア産LNG輸入の行方が不透明になる中、電力、ガス事業者間で余剰在庫を融通するなどの代替措置も進めている。また、オーストラリアを今週訪問した萩生田光一経産相が米豪のエネルギー相と個別に会談し、LNGの増産と安定供給を依頼した。萩生田氏はその後の会見で、「日本の立場への理解が示された。十分理解いただいたと思う」と述べた。

(竹本能文、清水律子、浦中美穂、杉山健太郎 編集:山口貴也、久保信博)