【北京時事】中国の習近平国家主席(共産党総書記)が治安部門の基盤を強化している。全国人民代表大会(全人代、国会に相当)常務委員会は6月、警察を統括する公安相に習氏側近の王小洪氏の起用を決定。習政権は「腐敗撲滅」の名目で警察幹部の粛清を進めてきており、秋の党大会に向け治安部門の完全掌握を図る。
王氏は、習氏が福建省で勤務していた際の部下。自身の地方時代に目を付けた人物を中央の要職に就けるのは、習氏が特に好む人事手法だ。ほぼ一貫して警察畑を歩んできた王氏は北京市公安局長、公安次官などを歴任し、昨年11月に公安省の党組織トップに抜てきされた。今回閣僚ポストにも就いたことで、300万人とされる中国の警察部門を形式上は掌握したことになる。
王氏はまた、全国の警察・司法を統括する党中央政法委員会の副書記にも就任した。香港紙・星島日報は、中央政法委トップの書記は直近20年、いずれも公安相から昇進していると指摘。今年68歳で退任するとみられている現在の郭声※(※王ヘンに昆)書記の後任に、王氏が就く可能性が高いと報じた。
警察・司法部門では近年、反腐敗闘争を進める習氏の下、孫力軍・元公安次官や傅政華・前司法相ら幹部の摘発が続いている。かつて警察・司法の「独立王国化」によって習氏に対抗しようとして2014年に失脚した周永康・元中央政法委書記の影響力がいまだに残っているとされ、党大会で3期目入りを目指す習氏は異論の徹底排除に躍起になっている。
ただ、警察トップに側近を送り込んだものの、その他の人事では習氏の思い通りに進んでいないとの見方もある。次期外相の有力候補だった楽玉成氏は、外務次官から畑違いの国家ラジオテレビ総局副局長に転出。習氏の意向に沿う形で新疆ウイグル自治区をトップとして厳しく治めてきた陳全国氏は、農村政策部門に異動した。いずれも事実上の降格人事で、党大会に向けて党内で駆け引きが続いているもようだ。