先週、トルコと国連が仲介してウクライナの穀物輸出を可能とする4カ国の合意が成立した。ウクライナとロシアもこの文書に署名しており、懸案だったウクライナの穀物が数週間以内に可能になるとみられていた。戦争という非人道的な出来事の中で、食糧難に喘ぐ貧しい人々に救済の手を差し延べる人道的な合意が成立した。ロシアも捨てたものではない、久しぶりにロシアに対する小さな評価が頭の中に広がった。それも束の間、合意文書に署名した翌日、ロシアは穀物輸出の拠点となるはずだったオデーサの港をミサイルで攻撃した。何のための合意だったのか、一瞬我が目を疑った。最初はこの事実を否定したロシアも24日になって「軍事インフラを破壊したもので、合意には反していない」(ロシア軍部)と攻撃の事実を認めた。ラブロフ外相は「ロシア産の農産物も輸出できるよう欧米の制裁を解除すべきだ」と改めて主張した。ロシア、どこまでも嫌悪感が付きまとう国だ。
時事ドットコムによるとウクライナ外務省報道官は23日、「合意の達成に大変な努力を注いでくれた国連のグテレス事務総長とトルコのエルドアン大統領の顔に、ロシアのプーチン大統領は唾を吐いた」と批判した。「合意を履行できなくなれば、世界の食料危機悪化の全責任をロシアが負うのだ」と訴えた。その通りだと思う。国連のハク事務総長副報道官も声明を出し「事務総長はオデッサ港攻撃を明確に非難する」と発表。「ロシア、ウクライナ、トルコによる合意の完全な履行は必須だ」と呼び掛けた。欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表(外相)も「ことさら非難に値する。国際法も国際的な約束もロシアは完全に無視することがまた示された」と強く非難した。同感だ。プーチンのロシアは国際社会の合意などまったく意に介さないようだ。独善的で反道徳的。独裁国家で独りよがり。すべてが自分勝手だ。おそらく今回の合意もプーチンに意に沿わなかったのだろう。
これでウクライナの穀物輸出は再び暗礁に乗り上げる可能性が高い。今回の事態を親ロシアの中国はどう受け止めるのだろう。ラブロフ外相が主張する「欧米の制裁解除」は多分プーチンの指示だろう。合意文書に署名した翌日にこういうことをやる。ロシアはこの1点だけで安保理の常任理事国に留まる資格はない。事務総長の顔に唾を吐きかけられた国連は、対抗手段としてロシアを即刻常任理事国から追放すべきだ。中国は拒否権を発動するのだろうか。仮にそうなら総会にかけてロシアの国連加盟資格そのものを剥奪すればいい。正義も大義もない侵略戦争を勝手に始め、西側が抗議すれば発展途上国を巻き込んで西側諸国を非難するロシア。自ら食糧難を引き起こしながら、ようやくまとまった輸出合意を自ら踏み躙る。数多の戦争犯罪を犯しながら恬として恥じない。そんな国を国連はいつまでチヤホヤするのか。
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