Libby Cherry、Liz McCormick

  • 「グレートモデレーション」は完全に過ぎ去った-PIMCO
  • インフレ鈍化は市場の期待よりずっと遅いペースに-キャピタルG
A trader on the floor of the New York Stock Exchange (NYSE) in New York, U.S., on Monday, June 27, 2022.  Photographer: Michael Nagle/Bloomberg

世界各国・地域の中央銀行がインフレとの闘いで長期的な勝利を収めると見込む市場は誤っているとパシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)やキャピタル・グループなど世界最大級の債券ファンドが指摘している。

  米連邦準備制度や欧州中央銀行(ECB)が経済成長の鈍化もしくはリセッション(景気後退)を誘発しながらも利上げを進め、数十年ぶりのペースとなっている消費者物価上昇率を押し下げることにはほとんど疑いの余地はない。

  ただ、PIMCOやキャピタル・グループ、ユニオン・インベストメントなどに在籍する投資家やストラテジストは、インフレ率がピークから鈍化するとしても、以前のような物価の安定が戻る可能性は小さいとみている。世界経済が様変わりしているためだ。

  グローバル化の進展期においては、安い商品と低水準の労働コストがインフレ抑制に寄与していたが、今ではそれが反転しつつある。ウクライナで戦争を始めたロシアとの関係を断とうとする動きが広がる中で、原油・ガス価格は高止まり。企業は政治的緊張を考慮しながら、混乱したサプライチェーンの立て直しを図っている。労働需給の逼迫(ひっぱく)は賃上げを求める労働者側の力を高めている。

  巨額資金を運用するファンドマネジャーらが今身構えながら対応しようとしているのは、2%前後の目標を大きく上回るインフレが続く環境だ。リスクを減らすため、インフレ連動債を購入し、商品へのエクスポージャーを増やし、債券に資金を直接投じる代わりに現金保有を強化している。インフレ率がここ数十年に見られた水準にすぐに戻ることはないとの認識からだ。

世界的にタイトな労働市場

  PIMCOの北米エコノミスト、ティファニー・ウィルディング氏は極めて不安定なインフレの時代を想定。「数年にわたる価格水準調整を招く全般的な仕入れコスト上昇」につながる変化に世界が適応する中で、「過去20年の『グレートモデレーション』は完全に過ぎ去った」と話す。

  こうした見方は、物価上昇圧力の後退で米金融当局が景気支援に向けて来年に利下げを始めることができるとの観測と対照的だ。

  ユニオン・インベストメントのマクロ・戦略責任者マイケル・ヘルズム氏は、米金融当局の利上げ停止が早過ぎ、結局はインフレ率が再加速して利上げを再び始めるリスクもあると説明する。

  キャピタル・グループの投資ディレクター、フラビオ・カーペンザノ氏(ロンドン在勤)は世界的にタイトな労働市場に言及。連邦準備制度がインフレを急速に鈍化させるには、大規模なリセッションと失業率上昇を容認する必要があることを意味しているとの見方を示す。

  同氏は米国債相場が7月に上昇した機を捉え、利上げに最も敏感な米国債の保有を減らした。債券投資の観点からすれば、インフレ懸念が比較的小さい中国は魅力的だという。

  「インフレ鈍化ペースは市場の期待よりずっと遅い」とカーペンザノ氏は分析。23年半ばの米利下げを見込む市場は誤っている可能性があり、「インフレは決して解かれたパズルではない。米連邦準備制度は警戒を続けるだろう」と話した。

原題:Pimco, Capital Group Say Era of Low Inflation Is Gone for Good(原題)