ウクライナ戦争はロシア軍がクリミア半島でやや劣勢を強いられているが、全体的な戦況は膠着状態に陥っているように見える。これからこの戦争はどのような展開になるのか、素人には判断がつきかねる。そんな中できのう放送されたB Sフジプライムニュースが参考になった。タイトルは「ロシア侵攻半年を検証 兵頭&畔蒜&小泉討論」とある。出席者はお馴染みの防衛省防衛研究所政策研究部長・兵頭慎治氏、笹川平和財団主任研究・畔蒜泰助、東京大学先端科学技術研究センター専任講師・小泉悠氏の3人。ウクライナ戦争の今後について多角的な議論が展開された。ポイントはウクライナ軍が仕掛けていると見られるクリミア半島に対する軍事攻撃の解釈だ。ウクライ側は攻撃について沈黙を守り、ロシアは事故と公表している。ロシア軍の主要な軍事基地3か所で相次いで起こった“爆発”はどう見ても事故とは思えない。3人によるとその裏には、プーチンの深刻な“苦悩”があるようだ。

クリミア半島は2014年3月、プーチンによってロシアに併合された。ロシアから見ればここは明らかにロシア領なのである。ゼレンスキー大統領はその奪還を公言している。クリミアに対する攻撃は誰が見てもウクライナ軍によるもののようにみえる。だが、ウクライナ側はそれを公には認めていない。一方のロシアは基地内で「火災が発生した」と、あたかも事故だが起こったかのような扱いに終始している。プーチンがはじめた戦争は、ウクライナ東部で生活するロシア語を話すスラブ人を、ナチと化したゼレンスキー政権の弾圧から解放することにある。だからこれは戦争ではない。特別軍事作戦なのである。クリミア半島での戦闘は特別軍事作戦とは別のもの。ウクライナ軍が仕掛けているとすれば、それはロシアの領土に対する直接的な攻撃になる。プーチンは断固としてこれを排除しなければならない。

クリミアで仕掛けられた爆発がウクライナによるものだとすれば、プーチンはこの戦争を「特別軍事作戦」から「本格的な戦争」に切り替えざるを得なくなる。そのためには総動員体制の布告が必要だ。国内には核兵器の使用も辞さない過激派がいる。彼らはプーチンの戦いを生ぬるいと突き上げているようだ。反対に戦争に反対する一般庶民も多数いる。総動員令を発動した途端、国内の世論がどう動くかわからない。プーチンの腹は固まらない。だからクリミアへの攻撃はウクライナ軍によるものとは公言できない。核兵器の使用も辞さない本格的な戦争へ突入したら国内は持つのか、プーチンの“苦悩”は続く。ウクライナもそれを承知の上で沈黙を守る。ウクライナ戦争は終息へのかすかな展望と同時に、より過激な本格的な戦争に発展する可能性がある。プーチンは25日、軍の総兵力を13万7000人増員して115万人とする大統領令に署名した。発行日は来年1月1日。果たして・・・・。