オンラインで開いた先進7カ国(G7)財務相会合に参加した鈴木俊一財務相=2日午後、財務省(同省提供)
オンラインで開いた先進7カ国(G7)財務相会合に参加した鈴木俊一財務相=2日午後、財務省(同省提供)

 【ワシントン時事】日米欧の先進7カ国(G7)は2日、オンラインで財務相会合を開き、ロシア産石油の取引価格に上限を設ける追加制裁の枠組みを12月に導入することで合意した。ウクライナ侵攻を続けるロシアの戦費調達を阻む狙いだが、主要消費国である中国やインドなど新興国との連携も不可欠。制裁の「抜け道」をふさぎ、実効性をどう確保するかが次の焦点となる。

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 G7は6月の首脳会議で、ロシア産石油に上限価格を設定する制裁の検討で一致。原油の上限価格については今年12月5日、石油製品は来年2月5日に導入する予定だ。上限を超える価格で取引されたロシア産原油や石油製品を運ぶ船舶に保険を提供しないよう保険会社に義務付ける。今後、上限価格の水準など細部を詰める。

 世界の船舶保険市場を一手に担う欧米がこの制裁を実施すれば、ロシアには打撃となる。従来の制裁は、ロシア産の供給が減ったことで原油価格の高騰を招き、結果的にロシアが収入を増やす事態を招いた。鈴木俊一財務相は「ロシアの収入を制限しつつ各国のエネルギー安定供給を確保する」と、上限価格設定の意義を強調した。

 ただ、拘束力は乏しく、実効性には疑問が残る。G7はロシア産石油の輸入を禁止する方針を決定済み。制裁の実効性を高めるため、ロシア産の輸入を増やしている中印を含めて「広範な連合の設立を目指す」(G7財務相声明)が、民間の保険会社が取引実態を把握するのは難しい。

 また、日本の財務省幹部によると、日本企業が参画するロシア極東の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」から調達する石油は例外扱いとし、上限価格を設けない方針だ。G7は制度設計の議論に既に数カ月を費やしており、例外規定が増えれば、制裁が骨抜きになるリスクもある。