[ブリュッセル 9日 ロイター] – 欧州連合(EU)エネルギー相は9日に開いた緊急会合で、天然ガス以外で発電する電力事業者の利益に上限を設けるほか、電力会社を倒産させないよう欧州委員会に提案することで一致した。また、天然ガスに価格上限を設ける案については、ロシア産のみを対象にせず、対象を広範にするよう提案した。

輪番制のEU議長国を現在務めるチェコが発表したエネルギー相会合の会議要旨によると、エネルギー価格の高騰を受けた消費者の負担増に対処する方法を模索する中で、ロシア産天然ガスを特定的に対象としない、広範な天然ガスの価格上限設定を含む緊急措置を策定するよう欧州委に要請することで合意した。

議事要旨によると、ロシアから輸入する天然ガスに価格上限を設ける案は幅広い支持を得られなかった。

また、電力会社に緊急資金を提供するという提案を支持した上で、欧州委員会にそのような措置を設計するよう要請した。

欧州委は来週、具体的な提案を発表する見通し。複数のEU外交筋によると、EUエネルギー相は今月末にも緊急会合を開き、最終案について協議する可能性がある。

ロシア産天然ガスに価格上限を設ける案は、ウクライナに侵攻するロシアの戦争資金を断つ手段として有効としてバルト3国などが支持。一方、ロシア産エネルギーになお依存している中・東欧諸国は、価格上限が設定されれば、ロシアは直ちに供給を停止すると危惧している。

イタリアのチンゴラーニ・エコロジー移行相によると、EU加盟15カ国が広範な天然ガスの価格上限設定に賛成したという。ただ、オランダ高官は「広範な(ガス価格の)上限設定に幅広い支持があったとは言えない」とした。

欧州委員会のカドリ・シムソン委員(エネルギー担当)は、欧州の液化天然ガスの価格に上限を設定すると、液化天然ガスが他の地域に流出し欧州で必要とされる燃料が奪われる危険性があると警告。「われわれは安全な供給を危険にさらさないよう注意しなければならない」と述べた。

ロシアのプーチン大統領は7日、ウラジオストクで開催された東方経済フォーラムで行った演説で、ロシア産エネルギーに上限価格が設定されれば、ガス・石油供給を停止すると表明した。