カーボンニュートラル実現に向けた「気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)」の開幕を控えて、脱炭素実現に向けた駆け引きが水面下で始まっているようだ。COP27は11月6日にエジプトのシャルムエルシェイクで開幕する。国連環境計画(U N E P)が27日に発表した報告書は、「各国政府の温室効果ガス削減目標が達成されても、地球の平均気温は今世紀中に2.8度上昇する」との見込みを提示した。ここでいう各国政府の計画というのはCOP26で決まった削減目標のことだ。日本の場合は2030年までにCO2の排出量を2013年比46%削減、2050年には実質ゼロにするとするというものだ。専門家の間でもこの計画は「実現は相当難しい」と見られている。各国はこれに相当する独自の計画を持っている。それを全部実現してもなお地球の平均気温は今世紀中に2.8度上昇するというのがUNEPの予測だ。

それでも「やるしかない」というのが、いま地球が直面している状況だ。そんな中でプーチンは気候変動対策そっちのけでウクライナに戦争を仕掛けている。ミサイルを打ち込み、ビルを破壊し、何の罪もない市民を無差別に虐殺している。腹立たしいことこの上もない。だが、そんな輩はプーチンだけではないようだ。ロイターによると中国生態環境省の李高・気候変動対応室室長はきのう、「先進国は気候変動に関して『空虚なスローガン』を排し、資金拠出の約束達成に向けて前進する必要がある」と強調した。気候変動問題に常につきまとう先進国と新興国の対立だ。これまで制限なくCO2を排出しまくってきた先進国が、ここにきて脱炭素を新興国にまで押し付けるのは不合理。過去の排出責任を償う上でも新興国向けに1000億円の支援金を用意すべきだ。中国を新興国に含めていいか議論はあるが、先進国が約束した支援金額だ。中国はその“約束”の履行を求めている。

コロナにインフレ、経済の停滞に戦争だ。温室効果ガスに覆われた地球の環境悪化は人類の活動そのものが作り出している。U N E Pに先駆けて報告書をまとめた非営利団体の「世界資源研究所(WRI)」は、9月末までに提出された温室効果ガスの国別削減目標(NDC)は「世界の温室効果ガス排出量を30年までに19年水準からわずか7%削減するに過ぎない」と指摘する。報告書を執筆したタリン・フランセン氏は「新型コロナウイルス流行とそれに伴う経済的苦境が21年以降、温室効果ガスの削減目標を積み上げようという各国の意欲をそいだ可能性がある」と述べている。これにプーチンの戦争だ。習近平総書記の独裁体制が確立した中国は、台湾を武力攻撃する可能性が強まった。ここでも戦争の機運が燻っている。地球の環境はどんどん悪くなる。対策を協議するCOPは南北間論争に終始する。ウクライナ戦争も脱炭素も一向に出口が見えない。