[東京 15日 ロイター] – 政府は15日、9日に開かれた防衛力強化に関する有識者会議(座長・佐々江賢一郎元外務次官)の第3回会合の議事要旨を公表し、西村康稔経産相が、防衛費増強の財源としての増税について慎重な意見を述べていたことが分かった。会議では防衛力増強のため安定財源として所得税引き上げを含め増税の必要性を主張する意見が主流だった。

西村経産相は「デジタルやグリーンなどを中心に民間投資が上向くなど、日本経済にようやく変化の兆しが出てきている。この5年間がまさに成長軌道に乗るかどうかの重要な時期であることを踏まえ、慎重に検討すべき」と述べている。

<委員から所得増税や建設国債で意見>

一方、他の委員の間では「防衛力強化の受益が広く国民全体に及ぶことを踏まえ、それに要する費用は、国民全体で広く負担する形を目指すべき」と言った増税提唱意見が多い。

別の委員の間でも「恒久支出、恒久財源としての防衛費の増額のための財源については、税が必要であることは明らか」「財源については、幅広く国民に負担してもらうため、個人所得税の引き上げも視野に入れる必要」などの意見が出た。議事要旨は民間議員名は伏せられている。

国債発行についても、「自衛隊の隊舎など、防衛費からねん出するものには建設国債が充てられていない」として、「防衛力強化の財源確保を検討する中で見直すことが必要」との意見が出た。

<外国製ミサイル配備、海自・海保共同訓練急務>

防衛力の抜本的な強化の必要性では委員らは一致しており、防衛力強化の一環として「外国製ミサイルを購入して早期配備を優先すべきだ」との指摘や、「有事を想定し、海上自衛隊と海上保安庁の共同訓練の必要があり、そのために政令を速やかに制定すべき」との意見もあった。

浜田靖一防衛相は「防衛力の抜本的強化と同様、事業の内容や、それに伴う経費について、真に必要なものを積み上げていくことが不可欠であり、防衛省としても、そのための取り組みにしっかりと関与していきたい」と発言。

岸田文雄首相も「防衛力の強化に当たっては、経済財政の持続性に対する高い信用や産業競争力とあわせて、国力全体を強化していくことが重要」などと発言した。

有識者会議は11月末にも開催予定の次回会合で政府に対する提言をまとめ、政府は12月中に防衛3文書改定や2023年度の防衛予算を確定する段取りとなっている。