- 円安で国内投資家のホームバイアス変われば財政の持続可能性に影響
- YCC調整は今後数カ月の賃金動向次第、インフレの行方の判断材料
ムーディーズ・インベスターズ・サービスで日本国債を担当するクリスチャン・ド・グズマン・シニア・バイス・プレジデントは、物価高克服と経済再生に向けた総合経済対策に伴う2022年度第2次補正予算案について「日本政府の財政規律が新しい局面を迎えることは意味しない」と書面でコメントした。
- 日本の財政規律は既に、格付けが高めの諸外国と比較して強いとは言えない
- 補正予算案には税収の上振れ分や21年度予算の余剰金などが財源の一部に充てられることもあり、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)に伴う規制から経済が再開するにつれ財政再建が進むとの見方を維持する
- 円安が政府の資金調達環境を著しく弱体化させる場合には、財政の持続可能性に関する評価に直接的に影響するだろう
- 例えば日本国債への需要を下支えしている国内投資家のホームバイアス(自国資産選好)が変わる場合など
- 日本銀行の国債買い入れは長期的には持続不可能
- ただし、海外で見られるような金利上昇から日本の財政を守るという意味で、短期的には強力なサポートになる
- イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の調整は、今後数カ月の賃金動向によるだろう
- 賃金動向はインフレ期待がどこに向かうのか政策当局が判断する材料になる
- 日銀の政策はいかなる変更も段階的に行われ、また事前に明示されると予想する
- このため国内の金利環境が急変する可能性は低い
- 残存する国債の平均償還年限は約9年と長いため、金利が上昇しても政府の利払い負担はとても緩やかな増加にとどまるだろう