谷口崇子、Min Jeong Lee

  • 大手邦銀は決済業務や外為取引で遅れ「競争優位に展開可能な市場」
  • リスク管理やコンプライアンスを強化へ、来年は10人程度採用の方針

ソフトバンクグループも出資し、決済業務や外国為替取引を手掛ける英デジタル銀行のレボリュートは、低い手数料を武器に、日本の個人会員数を2025年末までに現在の8万人から100万人に急拡大させる計画だ。キャッシュレス決済後進国の日本市場は開拓余地が大きいとみて法人向けサービスへの参入も急ぐ。

レボリュートのストロンスキーCEOSource: Bloomberg

  創業者のニコライ・ストロンスキー最高経営責任者(CEO)は東京でブルームバーグのインタビューに答え、大手邦銀のサービスは「海外と比べて遅れている」とし、日本は競争優位に事業展開でき得る魅力的な市場だと指摘。海外旅行を好む人々や輸出産業が多い点も、同社の外国為替サービスのメリットを生かすのに好都合だとの認識を示した。

  キャッシュレス推進協議会の資料によると、20年の日本のキャッシュレス決済比率は29.8%と、韓国(93.6%)や米国(55.8%)などに比べ低水準にとどまり、日本政府も同比率の引き上げを目指している。

  ストロンスキー氏は、「われわれが構築しつつあるグローバルな金融網に日本のすべての人がアクセスできるようになればいい」と強調。「それは、どこの通貨でも決済でき、どこの資産も即時に売買できる世界だ」と語り、日本の市場開拓に意欲を見せた。

欧州でサービス拡大先行

  レボリュートは15年の創業。21年にはソフトバンクGのビジョン・ファンド2号やタイガー・グローバル・マネジメントなどから8億ドル(現在のレートで約1100億円)を調達した企業価値約330億ドルのユニコーン。自動家計簿や宿泊予約、暗号資産取引も手掛ける。スマホアプリ経由という手軽さもあり欧州などで急拡大。個人会員は11月現在、世界で約2500万人を数える。

  日本には20年に参入、現在は個人向けに会員制で月額無料から1980円まで3段階のサービスを提供している。外貨取引は手数料を上乗せしない「銀行間レート」を無料会員にも月75万円まで適用。会員同士の個人間送金は海外、国内ともに手数料無料に設定している。

  約3年で現在の12倍超となる会員数100万人の目標については、欧州での事業拡大も同様のペースだったとし、達成に自信を示した。顧客拡大とともに収益性を重視しており、日本事業が採算ラインを超えるまで、広告費などを抑える一方、入り口での本人確認手続きの改善やアプリの改良に経営資源を投入し、利用者から信頼を得たい考え。

法人向けは中堅・中小企業に照準

  海外で先行する法人向け送金サービスなどの日本での展開については、「日本には輸出志向の中堅・中小企業が数多くあり、われわれは彼らにうってつけの商品を提供できる」と説明。関係当局の承認を前提に来年から導入したい方針を示した。日本の複雑な規制や限られた需要から、暗号資産関連事業には現時点で参入する考えはないという。

  金融庁は9月、レボリュートの日本法人に対し、事業拡大にマネーロンダリング(資金洗浄)対策などの管理体制構築が追い付いていないなどとし、業務改善命令を出した。ストロンスキー氏は「日本に参入した当時はまだノウハウが確立しておらず、場当たり的に対応していた」と振り返り、現在は国ごとの規制に合わせた体制を構築できているとした。

  ストロンスキー氏は、日本で現在40人の従業員を増員し、来年中に10人程度を採用する方針も示した。行政処分を受けた経緯からも、新規採用も含めると半分近くがリスク管理やコンプライアンス担当になる見通しだという。