[東京 29日 ロイター] – 西村康稔経済産業相は29日、脱炭素社会に向けた戦略を協議する「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」で、民間投資の呼び水として発行を検討する「GX経済移行債(仮称)」の償還期限について2050年までとする考えを示した。脱炭素をめぐる政府の目標達成年度に合わせた。

政府は今後10年間で官民合わせて150兆円超の脱炭素分野への投資が必要と試算し、そのうち20兆円規模を先行して発行するGX移行債により調達する方針を示している。

GX移行債の発行に当たっては、資金使途とそのモニタリング、金額、市場の流動性の確保やシステム対応、調達資金の支出管理など発行方法の観点からも検討を進める。

二酸化炭素(CO2)の排出に金銭負担を求めるカーボンプライシング(CP)を財源とし、50年までに償還を終える必要があるとした。

財源となるCPの手法としては、炭素税ではなく、賦課金と排出量取引制度の2つを組み合わせる。炭素に対する賦課金は、化石燃料の輸入事業者などを対象に導入することを検討。排出量取引制度では、発電部門に対して政府が割り当てる排出権を、段階的に有償化する案を示した。いずれも導入時期については今後検討する。

環境省によると、石油や石炭などを使用する発電部門が日本のCO2排出量に占める割合は40%(21年3月末時点)を超える。発電部門の排出権を有償化することで、再生可能エネルギーや原子力などの代替手段の活用など電力の脱炭素化をさらに加速する。

日本の排出量取引市場は、現在企業の自主的な取り組みを促す設計だが、参加しない企業との公平性や、排出量削減の実効性を高めるためには、CO2削減目標に対する民間の第三者による認証や規律の強化などの検討も必要とした。

岸田文雄首相は、次回のGX会議で今年の議論の取りまとめをするとし、具体的なGX移行債の償還時期や成長移行型カーボンプライシングについて実行準備に移すため制度案を示すよう関係閣僚に指示した。